紅茶やコーヒーの受け皿は、そこに移して飲むためだったものの名残
喫茶店でコーヒーや紅茶を頼むと、受け皿の上にカップが置かれて出てくることがあります。 この皿を「ソーサー」と言います。
カップと皿が触れるとカチャカチャうるさいですし、洗うのにも手間がかかります。 なぜこんなものが付いてくるのか、疑問に思ったことはないでしょうか。
「上に砂糖やミルクを置くため」と考えられますが、それなら同じく砂糖やミルクが付くアイスコーヒーを頼んだ時にもソーサーを付けるべきです。 「カップから溢れても皿が受け止めてくれる」のであれば、ホットコーヒーやホットティーにだけ付けるのは不自然です。
何故わざわざ下に皿を置くのかと言えば、元々は中身を下の皿に移してから飲んでいたのです。 ソーサーはその名残です。
ソーサーの元々の用途は、飲み物を移して冷まして飲むためのもの
その昔、カップには持ち手が付いておらず、「ティーボウル」と言ってちょうど茶碗と湯飲みの中間ぐらいの形をしていました。
しかしここにアツアツの紅茶を注ぐと、熱が陶器に伝わって持つことができません。 そこで活躍するのが「ソーサー」です。
一旦ソーサーに中身を注いでから飲めば、熱くて持てないなんてことにはなりません。 また中身も早く冷えるため、入れ替えてすぐに飲むことができます。
「皿に飲み物を入れても飲みにくい」と思うでしょうが、当時は中が深く作られていて飲みやすい形をしていました。 まあカップと比べて使い勝手が悪いのは否定しませんが…
「これでは使い勝手が悪い」と持ち手が付いたものも作られましたが、「ティーボウルこそがアフタヌーンティーに相応しい」と拘りを持った英国紳士は、不便なティーボウルを使い続けます。
しかし上流階級の嗜みだった紅茶が中流・庶民と広がるにつれて持ち手の付いた「ティーカップ」が主流となり、現在はティーカップの下の受け皿としてその名残を留めるのみとなったのです。
ティーカップよりソーサーの方が冷える理由
暖かい飲み物を飲むためのカップは、中身が簡単に冷めないように出来ています。 素材には熱伝導率が低い陶器などが使われ、また中身が空気に接する面積も低いです。 これではアツアツの中身が中々冷めてくれません。
ソーサーはカップと同じ素材で作られていますが、特筆すべきは中身が空気と接する面積の大きさです。 空気はカップよりも熱伝導率が高く、温度をガンガン下げてくれます。
お風呂が熱くて入れない時、ぐるぐると混ぜて冷やそうとしますよね。 原理はあれと同じです。
英国紳士はそうして冷ました紅茶を皿で飲んでいたという訳です。合理的…なんですかね?