千手観音像には腕が42本しかない
手が沢山ある観音様の像と言えば千手観音像です。 しかし千手観音像の手を数えてみると、明らかに千本もないものが少なくありません。
多くの観音像の腕は42本しかありませんが、それで千手と呼ばれるのにはちゃんと理由があるのです。 中には本当に千本の腕がある観音像もあるんですけどね。
千手観音の腕の数は?
千手観音は正式には「千手千眼観世音菩薩」という名で、千本の手を持ちその手のひらには目が付いています。 これは全ての民を救済する観音様の慈悲の心と力の広大さを表しています。
しかし実は一般的な千手観音には腕が42本しかありません。 なぜ42本の腕で千手観音と呼ばれているのかと言えば、腕一本で25の世界を救うからだそうです。
一般的な千手観音の腕は42本
一般的な千手観音は「十一面四十二臂」で、11の頭に42本の腕を持っています。 千手には遠く及びませんが、これを千手観音と呼ぶのには深い理由があるのです。
千手観音の胸の前にある2本を除いた40本の腕は「三界二十五有」つまり25の世界を救うとされています。 25の世界を腕の1本で救い、それを40本でするから25×40=1000で千手観音という訳です。
…何だかとても胡散臭い理由ですね。 私の信仰心が足りないから「手を千本付けるの大変だから42本にしたんじゃないのか」と疑ってしまうのでしょうか。
千手観音像は当初は千本腕の観音として作られていましたが、時代を下るにつれて42本腕のものが主流となりました。 しかし元々は本当に1000本腕だったんだから、25の世界救済云々は後付けフォローとしか思えないような気もします。
疑問は残りますが、何はともあれそんなありがたく深い理由で千手観音像は腕が42本でも千手観音なのです。(迂遠な物言い)
本当に千手ある千手観音像
本当に手が千本ある千手観音像も現存しています。
日本においては3体あり、京都府・寿宝寺、奈良県・唐招提寺、大阪府・葛井寺にそれぞれあります。 なお唐招提寺の千手観音像は953本しかありませんが、本来は1000本あったと言われています。
仏の呼称と分類
ついでなので仏さまの分類を書いておきます。 宗派によって諸説ありますが、とりあえずこれを覚えておけば仏様を理解しやすいと思います。
仏
ブッダとは悟りを開いた者を指す称号です。 仏教の開祖ゴウダマシッダールタ(シャカ)は、修行の果てに悟りを開き「ブッダ」となりました。
ブッダが何人いるかは宗派によって諸説あります。 部派仏教ではブッダはゴウダマシッダールタのみ、大乗仏教ではゴウダマシッダールタは七人目のブッダとされています。
仏教の神様である「仏(ほとけ)」は、「如来(≒ブッダ)」「菩薩」「明王」「天部」の階級に分かれています。 仏は本来如来のみを指す言葉ですが、一般的には他の階級の神様や故人も仏と言われることもあります。
如来
ブッダには十の称号があり「如来」はそのひとつです。 釈迦如来、阿弥陀如来、薬師如来などが有名です。
菩薩
ブッダになるために修行している者を「菩薩」と言います。 千手観音菩薩も菩薩であり、他にも文殊菩薩、普賢菩薩、弥勒菩薩、地蔵菩薩、観音菩薩などが有名です。
菩薩は修行中の身ながらも人々を救ってくれるありがたい存在です。 特に観音菩薩はご利益が沢山あることから、信仰の中心となっていることも多いです。
ちなみにチベット仏教では観音菩薩が守護尊であり、ダライ・ラマはその化身とされています。
明王
「明王」は人々に仏教を布教する役割を持っています。 不動明王、愛染明王、孔雀明王などが有名です。
怖い顔をしている者が多いのは、必死に布教しているとか、仏法を守らないものに怒っているとか言われています。
天(天部)
「天(天部)」は天界に住む者たちで、仏敵から仏や人々を守る役割を持っています。 東南西北を守る持国天、増長天、広目天、毘沙門天(四天王)、阿修羅が有名です。