海水位は北極の氷が溶けても変わらないが、南極の氷が溶けると上がる
暑い夏を迎える度に地球が温暖化していることを思い出します。 そんな温暖化の話題に付きものなのが、地球上の氷が溶けて水位が上がっている話です。
時々「氷が溶けても水位は上がらない」なんて言う人がいますが、これは北極などの水上に浮かぶ氷に限った話です。 南極やグリーンランドの氷が溶けるとしっかり水位が上がるのです。
北極の氷は溶けても水位が上がらない
北極は年中氷に閉ざされている場所で、その海氷域は世界最大の島であるグリーンランドの倍ぐらいの面積を持ちます。 こんな大量の氷が溶けたら大変なことになりそうですが、北極の氷が溶けても水位はほぼ上がりません。これは北極の氷が海に浮いているからです。
まず話の前提として知っておかなければならないのが「アルキメデスの原理」です。
アルキメデスの原理
流体(液体・気体)中の物体は、物体が押しのけている流体の重量と同じ大きさの上向きの浮力を受ける
氷が水に浮くのは氷の方が軽いからです。 凍ると10%ぐらい体積が増えて、そのぶん密度が小さくなります。(余談ですが個体よりも液体の方が密度が大きい物質は珍しいです)
氷は水よりも軽いため押しのけられる水量は自身の体積よりも少なく、90%は水没して10%は水上に出る=増えた体積の分だけ水上に出ます。 溶けて水になると氷だった時の水没部分に水が収まります。水だろうが氷だろうが常態によって水位は変わらないという訳です。
理科の授業でアルキメデスの原理を習う際に「北極の氷が溶けても水位は上昇しない」ことがよく例に出されます。 北極の下に陸地はなく氷が浮いているだけなので、北極の氷が全部溶けても水位はほぼ変わりません。(厳密には氷と海の塩分濃度差や点在する陸地などにより若干上がりますが)
しかしこれは北極のような「海に浮いている氷」に限った話で、地球全体の氷に適用できるものではないのです。
南極の氷は溶けると水位が上がる
陸上の氷が溶けると海水位が上がる
氷は海上だけでなく陸上にも沢山あります。氷に覆われた南極大陸や世界最大の島グリーンランドなどは、陸地の上に雪や氷が載っています。
これら陸地の上にある氷にはアルキメデスの原理は適用されません。 氷が溶けて水になって海に流れ込めば、流れ込んだだけ海面が上昇します。
氷河期にはアフリカ大陸・ユーラシア大陸・オーストラリア大陸・アメリカ大陸は全て地続きでした。 これらが海に隔てられるようになったのは、気候が温暖になって陸地の雪や氷が溶けて海に流れ込み、水位が上昇したからですね。(アフリカとユーラシアは今も繋がっていますが)
年々加速している海面上昇
南極やグリーンランドの氷は年々溶けだしており、海面を毎年2~3mmほど押し上げています。20世紀に海面は17cmほど上昇しており、21世紀の上昇速度はそれ以上になっています。
グリーンランド氷床が全て溶けると海面が7m上昇、南極氷床が全て溶けると海面が55m上昇すると言われれています。 特に近年はグリーンランド氷床が激しく融解しており、予断を許さない状況です。