磯野家の日常をコミカルに描く「サザエさん」の雑学
サザエさんは明るく元気なサザエさん一家の日常をコミカルに描いた四コマ漫画です。 かつてはテレビで週2回放送されていたほどの国民的アニメです。
私は暇な時にアニメを適当に見ていた口ですが、原作を読んでみると曖昧だった知識が補完されたり新たな発見があったりしました。 そんなサザエさんの雑学をお話したいと思います。なお本稿は基本的に原作準拠とします。
目次
磯野家の家族構成
サザエさんの舞台である磯野家に住む人々は以下の7名です。 まずはサザエさん一家の関係から見ていきましょう。
名前 | 波平との関係 | 年齢 |
---|---|---|
磯野波平 | 本人 | 54 |
磯野フネ | 妻 | 48 |
フグ田マスオ | 娘婿 | 32 |
フグ田サザエ | 長女 | 23 |
磯野カツオ | 長男 | 11 |
磯野ワカメ | 二女 | 7 |
フグ田タラオ | 孫 | 3 |
カツオとワカメはサザエさんの子どもではなく歳の離れた姉弟です。 カツオとワカメから見れば姉のサザエさんよりも甥のタラちゃんの方がずっと年齢が近いですけどね。
磯野家はフグタ家と同居しており、サザエさんの苗字はフグ田です。 なお磯野家の表札には磯野としか表記がなく、電話に出る時は「磯野でございます」と言います。 フグ田家宛ての郵便や電話はどうするんでしょうね。
フグ田家はもともと別の家に住んでいた
サザエさんの最初の舞台は博多でサザエさんは独身でしたが、波平さんの転勤で東京に引っ越すことになって今の家に移り住みます。
やがてサザエさんはマスオさんと結婚してタラちゃんを生み、借家に住み始めます。 しかしマスオさんが塀を切って薪にしようとしたのを大家さんに見つかり、借家を追い出されてフグタ家は磯野家に同居するようになります。
後に親戚のノリスケさんも転勤で上京し、一時は磯野家に下宿していました。 タエ子さんとお見合い結婚してからは近くのアパートに移り住んでいます。
サザエさんとカツオの年齢差はなぜ?
サザエさんとカツオは姉弟ですが、サザエさんが生まれたのは1922年頃なのに対してカツオが生まれたのは1938年頃と、年齢が16歳ほど離れています。
理由は明言されておらず特に理由はないかもしれませんが、読者の考察がいくつか広まっています。 有名なのは「戦争の影響説」「サザエとカツオの間にも子がいた説」「フネ後妻説」あたりですかね。
ただサザエが生まれてから15年間は戦争はないはずなので、戦争の影響説はあまり説得力を感じません。 またフネ後妻説は公式に否定されています。
サザエさんの髪形は当時流行のモガヘアー
サザエさんは特徴的な髪形をしています。 これは「モガヘアー」という連載当初に流行していた髪形で、当時は女性の憧れでした。
サザエさんの服装は時代に合わせて変化していきますが、髪形は最初から最後まで同じだったため今日では「サザエさんヘアー」なんて呼ばれることもあります。 髪形を変えてしまうと顔の判断が難しくなってしまうからでしょうか。
サザエさんはあまり美人ではない
サザエさんの顔について以下のエピソードがあります。
- カツオが「にんげんは顔ではない。心である。良かったね姉さん」と言う
- マスオが絵を描く際に野菜が高くなったからとサザエさんをモデルに野菜を描く
- 親戚の子に「どうしてそんなにお鼻が低いの?どうしてそんなにソバカスがあるの?」と言われる
- サザエさんがヘチマ水で化粧していると聞いたご近所さんがヘチマを育てるのを止める
どうやらあまり美人ではないようですね。代わりと言ってはなんですが、いつも明るく元気な性格で皆に愛されています。 カツオの言を借りると「にんげんは顔ではない。心である」といったところでしょう。
磯野家の先祖・磯野藻屑源素太皆
磯野家の先祖に磯野藻屑源素太皆(いそのもずくみたもとのすたみな)という人物がいます。 苗字に「源」とあることから、源氏の家系なのかもしれません。
カツオが「先祖に誰か有名人はいないか」と聞いて明らかになった人物で、お彼岸におはぎを38個食べて評判になったそうです。 なおカツオはそんなこと言えないと不服そうでした。
波平さんに髷を付けたような顔をしており、夢に出てきてお盆の備えが年々貧相になるのを怒ったり、3日坊主で終わった日記が出てきたりしています。
なお日記の日付は慶応3年(1871年)で、波平が1895年生まれであることを考えるとそう遠い関係ではないでしょう。 カツオの曾祖父~その少し上あたりではないでしょうか。
波平さんには双子がいる
波平さんには見た目がそっくりの双子の兄・海平さんがいます。 双子だけあって外見はそっくりで、フネさんが磯野家にいた海平さんを波平さんと勘違いしたほどです。
そんな外見がそっくりの二人ですが、特徴を知っていれば見分けるのは簡単です。 双方ともに頭頂部がハゲており、そこに毛が1本生えているのが波平さん、毛が2本生えているのが海平さんです。
海平さんの髪が抜けたらもう見分けられませんね。
波平さんは育毛剤を塗っている
頭頂部がはげあがった波平さんですが、諦めきれないのか育毛剤を塗っています。 フネさんがシワが取れるスキンクリームを塗っているのを「気休めにすぎんぞ」と言いながら、自分も育毛剤を塗り込んでいます。経験談でしょうか?
マスオさんが育毛剤をアフターシェーブローションと間違って使ったことがあり、その時はヒゲがボウボウに生えてきました。 凄まじい効果の育毛剤のようですが、残念ながら波平さんには効き目がないようですね。
ずっと浪人中のじん六さん
磯野家の隣に住むイササカさんは有名な作家で、引っ越してくる前からサザエさんがファンだったほどです。 ちなみにイササカ先生の奥さんはフネさんと同級生です。
そんなイササカ家にはじん六さんと浮え(うきえ)さんの兄妹がいます。 じん六さんは浪人中ですが、アニメのサザエさん世界では時間が進まないためずっと浪人生をしています。
原作では若干時間が進んでいますが、イササカ先生一家はほとんど出てこないのでじん六さんのその後は分かりません。 もしかすると大学生になっているかもしれませんね。
人間くさい動物たち
サザエさんに出てくる動物は時々人間のように喋ったり振舞ったりします。 浜さん家の犬のジュリーが葉巻を吸っていた話が有名ですが、それ以外にも動物が人のように振舞った話がいろいろあります。
動物が喋る、犬が買物や家出をする、カラスが新聞を読む、クマが遭難者に食料を要求する、ネズミがシジミの殻でブラジャーを作るなど、現実にはありえないコミカルな行動をします。
ジュリーの葉巻もそういった冗談の一種なのでしょうね。
稀に作者が登場する
サザエさんの作者・長谷川町子氏が稀に作中に登場することもあります。 休刊日に漫画を休めることを喜んでいたり、海外旅行に行ったり、漫画のオチを投げたりします。
サザエさんたちはちゃんと「サザエさんの作者」と認識しており、登場回はちょっとメタっぽくなります。
時代を反映した風俗資料になっている
サザエさんは時事・時勢・流行を絡めた話が多いため、時代を反映した一種の風俗資料となっています。 連載当時は当たり前の何気ない話だったのでしょうが、今読むと「当時はこんなこんなことがあったのか」と色々発見させられます。
サザエさんの連載が開始されたのは終戦の翌年ですが、この頃は生々しい戦後描写も多いです。 食料配給や闇市で買物する話、満州やソ連から引き上げてきた人、戦災孤児の募金集めなどの話があります。
また値上げに関する話がよくあり、靴が7割値上がりするとか、家賃が倍になるとかサラっと言われていて驚きます。 こんな時代もあったんですね。
他にもバスに女車掌がいる、昔の家電製品が新登場する、祝日の国旗掲揚をやめる、単位が尺貫法からメートル法に変わるなど、 今では当たり前のことが当たり前ではなく、そんな時代の変化に対する当時の人々の想いが知れて面白いです。
サザエさんは連載されていた1946~1974年頃の暮らしや風俗を描いた貴重な資料と言えるのかもしれません。
サザエさん最終話
サザエさんは連載誌を変えながら話が続きましたが、作者が体調を崩して休みがちになります。 やがて長期休載することとなり、そのまま再開されることなく話が終わりました。
そのため最終話は特に最終回感のないものです。 波平が新聞で山本有三の主義「子孫に美田を残さず」を見てワシと同じだと言うも、カツオに「『さ』と『せ』違い(=美田残せず)だよ」と突っ込まれて終わります。