クズ人間か、それとも理想の上司か「課長 島耕作」

島耕作はサラリーマン漫画の金字塔・島耕作シリーズの主人公です。 色々な役職の島耕作シリーズが発刊されていますが、その第一作目にして骨子となっているのが「課長 島耕作」です。

そんな島耕作は上司にしたい漫画キャラアンケートで一位を獲る一方でクズというイメージが纏わりついています。 よく知らない方からすれば不思議かもしれませんがこれらは両立しています。そんな島耕作の不思議な魅力をお話します。

課長 島耕作のあらすじ

島耕作は日本を牽引する最大手の電気メーカー「初芝電器産業」に勤める34歳の新米課長です。

800人いる同期の中でも出世は早い方で、仕事も付き合いもバリバリこなす立派なビジネスマンです。 妻と小学校受験を控える娘がいますが、家庭のことは疎かにしがちで妻との関係は冷え切っています。

そんな島耕作がビジネスマンとして働き、社内外の争いに巻き込まれ、魅力的な女性たちとの駆け引きを楽しみ、家庭を疎かにしつつ、波乱万丈な人生を歩んでいくお話です。

「課長 島耕作」は島耕作が課長から部長になるまでの9年間の出来事であり、立場や環境はもちろん思想や哲学も少しずつ変遷していきます。 なので島耕作がどのような人物かを一言で表すのは中々難しいです。

そんな島耕作の代表的なイメージと言えるのが「クズ」と「上司にしたい漫画キャラ」です。 この二大イメージを中心にお話したいと思います。

クズ人間 島耕作

島耕作と言えばサジェスト上位に「クズ」と出てくるほどクズ人間というイメージが強いです。 これは決して濡れ衣という訳ではなく、本作には様々なクズエピソードがあります。

そんな島耕作の名高いクズエピソードを紹介します。

不倫しすぎ 島耕作

島耕作は妻との関係は冷えているとはいえ立派な子持ち妻帯者です。 それにもかかわらず不倫しまくっており、特に序盤は話のたびに別の女性と肉体関係を持ちます。

基本的に島耕作からガツガツ求めるようなことはあまりなく、女性から激しいアプローチがあって流されることが多いです。 きっとメイン読者層である中年男性の願望が反映されているのでしょうね。

なお妻の不倫には思うところがあるようで、男の影を感じた時には家中を漁ったり探偵に調査依頼も出しています。 なおこの時点で島耕作は5人と関係して1人は現在進行形で続いており、人のことをとやかく言える立場にありません。

ちなみに妻は妻で不倫しており、ほどなく離婚を前提とした別居が始まります。 別居なのは離婚は評価に響くという島耕作の事情によるもので、別居中も互いに別の相手と恋愛を続けて結局3年後に離婚することになります。

保身 島耕作

デートスナックで女子大生を買った島耕作、なんと翌日その娘が会社の面接にやってきました。 採用されるのは不都合だと保身のため不採用にマルを付けるも、他が推して採用されてしまいます。

後日ホテルへと呼び出された島耕作ですが男女の関係にはならず、島は父親代わりだとネクタイをプレゼントされます。 ネクタイには「あなたに首ったけ」という意味があると知り、島は悪くない気分だと胸がきゅーんと熱くなるのでした。

この話に限りませんが、どう見てもクズいエピソードなのにいい話であるかのような演出がされることがあります。 これが漫画の作風であり島がクズというよりは世界が狂っている感じです。

保身 島耕作2

社内情報がライバル企業に流出しており上司命令で盗聴器を仕掛けた島耕作。 みごと証拠の会話を掴むものの、なんとスパイは不倫相手の女社員でした。

島耕作は保身のため上には報告せず情報を握り潰し、独自に証拠を固めて女社員に退職するよう迫ります。 女子社員は島を道連れにすることも可能でしたが、島耕作を好きになりそうだからと一人会社を去るのでした。

島耕作はこの女子社員を「孤立していて浮気を口外する友人がいなくて安全」と評しており、不倫のホテル代もタクシー代も女社員持ちでした。 この話の島耕作は不倫するわ、悪口言うわ、ケチだわ、保身に走るわとクズ度が高いです。

コングラチュレーション 島耕作

アメリカに転勤した島耕作、道端で白人のOL・アイリーンを拾って男女の関係になります。 関係がしばらく続いた頃、島耕作は道端で黒人とキスをするアイリーンを目撃しました。

ボーイフレンドがいるのか問うと自宅へと招待され、そこには敵意むき出しのボーイフレンド・ボブがいました。 ほどなく殴り合いに発展するもアイリーンが暴力に怒り、ご機嫌を取るため二人は和解して奇妙な三角関係が始まります。

やがて島耕作が帰国する間際にアイリーンが妊娠を告白、島耕作とボブは「コングラチュレーション(おめでとう)!」と叫ぶのでした。 アイリーンはどちらの子か分からないがボブとの子として育てると言いましたが、そういうことはボブと相談してから言って欲しいですね。

アイリーンは率直に言って狂っておりエキセントリックな言動が目立ちます。 それに引きずられてかこのエピソードは作中屈指の狂気を孕んでおり、意味不明すぎて逆にこれでいい気がしなくもないです。

ちなみに子は島耕作の種であり後のシリーズでひと騒動あるのですが、それはまた別のお話…

子の心、親知らず 島耕作

両親の別居が始まり複雑な家庭環境に置かれた島耕作の娘・奈美。 母親に引き取られて父親とは時々面会する関係になります。

島耕作は娘が勉強に付いていけてないと妻から聞いており、問うと白紙で0点のテストを渡されます。 しかし娘は次はいつ会えるのか、遊園地に行きたいとはぐらかすばかりです。

怒った島耕作は「いつからそんな風になった、遊園地に行きたきゃ100点取ってみろ」と怒鳴ります。 そんな風になったのは間違いなくお前のせいだぞ島耕作。

少し考えれば父親に構って欲しいがための行動と察せるものですが、仕事と女で多忙を極めていた島耕作には分かりませんでした。 後日、娘から遊園地をねだる手紙と100点のテストが届き、父として0点だったことに気づいて泣くのでした。

子の心、親知らず 島耕作2

別居から3年が経ち離婚することになった島耕作、相変わらず仕事と女で忙しい日々を送っていました。 その日は女性と食事して一緒に自宅へ帰るところでしたが、偶然のめぐり合わせで一人で帰ることになります。

帰ってくると娘・奈美が断りなく家へとやってきて、晩御飯を作って待っていました。 2時間前に食事したばかりの島耕作ですが「うわあすごいな!!」と嬉しそうにしてみせたのは流石に人の親です。

しかし心の中では「ホウレンソウが煮え過ぎてドロドロで吐きそうだ」「奈美の親切の押し売りにはいささかうんざりする」と文句を言い、「娘は迷惑な女になるのだろうか」「女は恐ろしいよ」とひとり考えるのでした。

奈美が急にやってきたのは、離婚が成立したこと、自宅では母親が男とよろしくやっていて居心地が悪いことが考えられます。 少しは察しろ島耕作、恐ろしいのはお前だよ。

上司にしたいキャラ 島耕作

島耕作は「上司にしたい漫画キャラ」アンケートにて見事1位に選ばれたことがあります。 上で挙げたクズエピソードを見る限りは人間失格レベルなのに不思議ですね。

しかし島耕作は家庭を疎かにするし女にはだらしない一方で、ビジネスマンとしては尊敬できる部分を多く持ちます。 上にはっきりと物を言い下の立場の者を大事にする性分で、弱い立場の人からすれば心強い存在です。

そんな島耕作の魅力あるビジネスマンとしてのエピソードを紹介します。

インサイダーには加担しない 島耕作

島耕作は上にもはっきりと物申す人物ですが、最初からそうだった訳ではありません。 その契機となったのがこのインサイダー取引です。

取締役が会長の急死を利用して株で一儲けしようと、情報公開を遅らせて株を他人名義のものと交換して売り、報道後に株価が下がったタイミングで買い戻しました。 この実行役となったのが島耕作です。

ただし島耕作には何の説明もなく指示が出され、怪しさを感じて後に調べたところインサイダーだと分かった経緯があります。 怒った島耕作は取り分だと提示されたお金を拒否し、初めて上に明確に逆らいました。

これ以降、島耕作は派閥とは距離を置いて上に媚びず自分の哲学を尊重するようになります。 この件はきっかけに過ぎませんが、これを機にクズキャラを脱却して上司にしたい漫画キャラとして成長していったと思います。

ただし下半身が緩いのは相変わらずですが…

パンを食べ続ける男 島耕作

上司の愛人と関係したことがばれて京都工場に左遷された島耕作、大ヒットしたパンメーカーで作ったパンを食べることになります。 このパンは料理の専門家よりも美味しいパンでしたが、パンのことをよく知らない島耕作は「正直いってあんまりうまくない、パンの専門家を呼んでメニューを作ろう」と言ってしまいます。

これがヒンシュクを買って孤立した島耕作、まずはパンのことを知ろうと昼食はパンを食べ続けます。 やがてこの真摯な態度が認められ、京都工場に受け入れられるのでした。

序盤の言動や昼食にパンを食べるだけの贖罪から、本件はクズエピソードに挙げられることもあります。 しかし島耕作より下の立場の者が多く上司権限でどうにかすることも可能な中で、自分の態度から改めたのは評価できると思います。

クズから脱却する島耕作を印象付けられたエピソードです。

搾取を許さない 島耕作

ゴルフコンペの料理や商品がやたら豪華で驚いた島耕作、調べてみると業者へタカっていたことが分かります。 しかし上司に文句を言っても聞き流すだけ、業者に問いただしても貰える仕事からすれば大したことはないと言われます。

大人になれと言われてしまう島耕作ですが、そういうのが大人ならガキのままで結構だと言うのでした。 島耕作の言うことは青臭いかもしれませんが誠実です。

また別の業者が料亭での支払いを強要された時には島耕作に直訴しにきたりしています。 弱い立場の者から頼られていることが分かりますね。

弱きを助ける 島耕作

島耕作は自分の意見をしっかり言う男で、上に媚びへつらうことも下を甘やかすこともありません。 社会人の多くが上に厚く下に薄くなる中で、下のこともちゃんと見ている立派な人物です。

取引業者や部下はもちろん、失脚したライバルや辞めてしまった人にも寄り添う行動をしています。 時には上役や組織の思惑に反することもある中で、このような振舞いは中々できることではありません。

また仕事上の人の管理は役目と認識していますが、部下の個性を尊重して問題児ともうまく付き合い、交際関係については「イッツ ノット マイビジネス」と寛大です。 島耕作自身も優等生のように見えてかなりの問題児なのでコツを知っているのかもしれませんね。

周囲の業が深すぎる 島耕作

島耕作は作中人物ではかなりの良識派と言えます。 これは島耕作が清廉潔白なのではなく、周囲の人間の業が深すぎるのです。

パワハラ・セクハラ・不倫・犯罪行為の横行、女遊びは当たり前で妾腹も珍しくない男たち、壮絶な過去を持ち倒錯した女たち、島耕作を愛する同性愛者など結構とんでもない人物ばかりです。

同僚たちも一見理想的な家庭を築いているようでいて、同性愛が原因で家族に興味が持てず破綻寸前だったり、家庭を疎かにして妻はヤクザと不倫して麻薬漬け・長女は妊娠して退学・長男は引きこもりだったりします。

島耕作のやっていることや家庭環境は冷静に見ると無茶苦茶ですが、それに輪をかけて無茶苦茶な人間に囲まれていると相対的にマシに見えてしまいます。 なんなんでしょうねこの世界。

男は度胸 島耕作

島耕作は仕事のためならば度胸を見せる男です。

イベントにて部下のチェックが甘かったためヤクザが入りこんでしまったことがありました。 このとき島耕作は「私が直接乗り込んで話を付けてくる」と一人ヤクザビルへと乗り込み、毅然とした態度で利用を断っています。

なおビビッて逃げたこともあります。 タイへの出張中、ある事情でゲイボーイと裏社会の大物のデートの約束を取り消す必要があったのですが、勇気を出して現場に向かうも無理と悟ると逃げ隠れています。

タイの一件は無様にも見えますが、逃げなければ本当に死んだ可能性がありました。 島耕作は勇気と無謀の違いを知る男と見ることもできます。

運も実力のうち 島耕作

派閥嫌いや上に物申す性格だと出世しにくいものですが、島耕作は確かな実績を作り出世していきます。 これは島耕作に実力があるから…というよりは、運と交友関係に恵まれているからです。以下はその一例です。

この運のような実力で確かな実績を上げており、特に社運を賭けた企業買収プロジェクトでは島耕作のアシストにより提示価格より18億ドル安く済んでいます。 初芝の予定価格からも8億ドル安いため会長からも高く評価されました。

運を掴めるのも実力のうち、作中でも「不思議な運がある」と評価されています。 このような「持っている人」であるのも上司にしたいポイントでしょう。

夫としてクズ、上司として理想 島耕作

島耕作の2大イメージである「クズ人間」と「上司にしたいキャラ」は一見相反しているように見えますが、実際のところは「夫としてはクズだけど、上司としては理想のキャラ」として両立しています。

また島耕作のクズエピソードは最序盤に異常な密度で固まっており、ある程度話が進むとほとんど気になりません。 そして段々とビジネスマンとして芯が通り、青臭いながらも誠実な男になっていきます。

また話の中心が男女模様からビジネスへと移り変わるため、島耕作の爛れた女性関係を見る機会も減っていきます。 終盤の姿は現実の上司よりもよほど頼もしく立派であり「こんな上司が欲しい」と思われても不思議ではありません。

そんな島耕作が波乱万丈な人生を歩むのが「課長 島耕作」であり以降も続いていく島耕作シリーズです。 序盤のクズ耕作は漫画としても黒歴史のような気がしなくもないですが、これもひとつの魅力だと思います。

島耕作のクズエピソードは単行本1~3巻に8割網羅されており特に1巻が酷いです。 笑えるクズエピソードに興味がある方は単行本1~3巻を読んでみてください。逆に魅力あるビジネスマンとしての島耕作に興味がある方はそこで挫けずに読み進めて欲しいです。

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