博多ラーメンだけが麺のゆで時間指定をやっている理由
日本には3万件ものラーメン屋がお店を構えており、その数は何と伝統食であるうどん屋やそば屋よりも上です。 比較的歴史は浅いラーメンですが、週に何度も食べるなんて人も少なくなく、今や日本を代表する国民食と言えるでしょう。
今日はそんなラーメンの麺についてお話したいと思います。
博多ラーメンの茹で時間と呼称
ラーメン屋の中には麺の茹で時間を指定できるお店があります。 特に九州系ラーメンでやっていることが多く、私がよく行く博多ラーメン屋の設定は以下の通りです。呼称 | 茹で時間 |
---|---|
やわめ | 60秒 |
普通 | 45秒 |
かため | 30秒 |
バリカタ | 20秒 |
ハリガネ | 10秒 |
粉落とし | 3秒 |
ラーメンと言えば茹で時間は3分のイメージがありますが、細麺で加水率の低い九州系ラーメンは茹で時間が短いです。 1分足らずの茹で時間で十分食べごろの麺になりますが、それにしても10秒や3秒は短すぎですよね。
私もバリカタまでは普通に食べられるのですが、下二つは一般人にはあまりお勧めしません。 ハリガネは茹で時間3分のカップ麺を1分で食べ始めるぐらいの印象、粉落としは小麦粉を半生で食べているような気分になります。
このような短い時間設定がされているのは博多ラーメンの麺に理由があります。 博多ラーメンは非常に細い麺が使われており、またラーメンの弾力や風味を出す「かん水」の量が少ないのが特徴です。
そのため博多ラーメンの麺はよくスープを吸って伸びやすい性質を持っています。 短い時間で茹で上がりますし、食べているうちにもドンブリの中でどんどんスープを吸って伸びていきます。 だから固めの麺を頼んでも、食べているうちに食べごろの麺になっていくという訳です。
逆に喜多方ラーメンに使われる極太麺はなかなかスープを吸いません。 固めで頼めば食べ終わるまで固めのままであり、茹で時間指定する意味があまりないのです。
そんな理由で博多ラーメンを中心とした細麺だけが茹で時間指定サービスをやっているのです。 それにしてもハリガネや粉落としは流石にやり過ぎだと思いますけどね。
茹で時間の短い麺を頼むもう一つのメリットに頼めばすぐ出てくることが挙げられます。 粉落としなら頼んだ20秒後には麺が届くので、せっかちな人には良いかもしれません。
ただ硬い麺を比較的許容できる私の基準でも、粉落としは正直嫌ですけどね。 中には粉落とし愛好家なんてのもいるそうですが、美味しいから頼んでいるんでしょうか?ちょっと気になります。
ラーメンの麺の雑学
博多ラーメンには茹で時間が設定されていますが、他のラーメン屋ではあまりそういった事はされていません。 その理由はラーメンの麺質にあるのですが、折角なのでラーメンの麺についてお話したいと思います。
麺の太さ
ラーメンの麺は一般的に「細麺」と「太麺」に分類されます。
細麺はツルツルとして喉越や歯切れが良く、相対的に表面積が増すためスープとよく絡みます。 あっさり系スープのラーメンに使われることが多く、九州系ラーメンが代表的ですね。
太麺はもちもちしてコシが強く食べ応えがあり、麺本来の風味を強く感じられます。 濃厚なスープのラーメンやつけ麺に使われることが多く、沖縄そばや喜多方ラーメンが代表的です。
ラーメンに限りませんが麺の太さには「切刃番手」という規格があり、これは「30mmの麺を何等分した太さか」を表しています。 うどんによく使われる7番なら麺の太さは30mmを7で割った4.29mm、そうめんによく使われる30番なら麺の太さは30mmを30で割った1mmです。
ラーメンは一般的に18番(1.7mm)~26番(1.15mm)の麺が使われており、この範囲で細ければ細麺、太ければ太麺と呼ばれることが多いです。 なお麺の太さはラーメンやお店によってまちまちであるため、細麺太麺の呼称も明確に定まっている訳ではありません。
以下はラーメンによく使われれる切刃番手の一例です。 何となくスープと麺の傾向が見て取れますよね。
呼称 | 太さ | 使われるラーメン | 他の麺類 |
---|---|---|---|
極太麺 | 10番 | 沖縄そば | うどん |
12番 | 喜多方ラーメン | ||
14番 | 佐野ラーメン | ||
太麺 | 16番 | 尾道ラーメン | |
18番 | 白河ラーメン | ひやむぎ | |
通常 | 20番 | 東京ラーメン | |
細麺 | 22番 | 札幌ラーメン | |
24番 | 箱館ラーメン | ||
26番 | 熊本ラーメン | そうめん | |
極細麺 | 28番 | 博多ラーメン |
麺の質
麺の質を大きく左右するのが「かん水」の加水率です。 かん水は麺に伸展性、弾力、風味、色などを加える役割があります。
一般に低加水麺は歯切れが良い・小麦本来の風味が強い・スープの味が絡みやすいのに対して、多加水麺は噛み応えがある・麺の風味が強い・スープが絡みにくいなどの特徴があります。 低加水麺は細麺に、多加水麺は太麺に使われるのが一般的です。
麺を「ストレート麺」「ちぢれ麺」と呼び分けることがありますが、傾向として加水率が低いとストレート麺、高いとちぢれ麺になります。 麺の太さに加えて加水率と麺質によって、よりスープと相性の良い理想のラーメンが完成する訳です。
「ラーメンはスープが命」とよく言われますが、麺はスープがどのように口に入っていくかを左右する重要な要素です。 自分でラーメンを作る場合は、スープの質によって麺を変えることを覚えておくと良いかもしれません。
スープについても色々書きたかったんですが、想像以上に長くなりそうなのでこの辺で…