忍者の火遁の術は火を吹いて敵を倒す術…ではない

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忍者と言えば漆黒の衣装に身を包み、疾風のように走って手裏剣を投げるイメージがあります。 そんな忍者の必殺技といえば遁術ですよね。

最もメジャーなのは火遁の術で、口から火を吹いて敵を火だるまにして倒します。 他にも水遁の術で洪水を起こしたり土遁の術で敵を地割れに飲み込んだりと、まるで妖術使いです。

でも実際の遁術はそれを利用して身を隠すための術で、敵を倒すためのものではないんですよね。 だから殺傷力なんてほとんどないんです。

忍者の遁術は逃げるための術

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忍者とはその昔日本にいた土豪や傭兵集団で、諜報・攪乱・ゲリラ戦に優れた者たちのことを指します。 しかし忍者全盛の当時は「忍者」という言葉はなく、地域や役割によって「乱破」「物見」「間士」など呼び方はまちまちでした。 だから現代の忍者然としたイメージのような特定の役割を持つ者たちではありません。

現代において本物の忍者を見ることはまずありませんが、テレビ・ゲーム・漫画・小説などではとてもよく見かけます。 海外での知名度も高く、興味を惹くものとしては侍を抑えるほどの人気を誇ります。

日ごろ(非現実で)見かける忍者といえば、忍法と呼ばれる原理のよく分からない術を使う姿が印象的です。 忍法の中でもよく見かけるのが「火遁の術」で、なんだかよく分からない原理で炎が出て敵を燃やし尽くす術として描かれています。

さてその火遁の術、実は実際の忍術に同名の術が存在しています。 他にも水遁の術、土遁の術など様々なものが実在しているのです。

これらを総称して「遁術」と言いますが、「遁」とは何かに身をかくして逃げることを言います。 つまり遁術とは相手を倒すためのものではなく、隠れたり逃げたりするためのものなのです。

木火土金水の五行に対応した遁術は、全てそれらを利用して逃げたり隠れたりするための術です。 中には相手に攻撃するものもありますが、これも殺すためというより怯ませてその隙に逃げるための性質が強いです。

火遁の術は火矢で藁を狙って射掛けて燃やし敵の注意をそちらに向かせる術で、木遁は木登りや草葉に隠れる術、水遁は泳いだり潜ったりする術、土遁は岩陰などの地形に隠れる術です。金遁なんてお金を撒いて敵が拾っている間に逃げるという、なんだかアレな術なのです。これらに共通して言えることは、戦うための術ではありません。

そもそも忍者の役割は諜報・後方かく乱・暗殺・ゲリラ戦といったもので、敵と派手な立ち回りで戦うことではないのです。 いちいち火を吹いて相手を倒していたら目立って仕方ありませんからね。 そんな訳で実際の遁術は逃げたり隠れたりするための術という話でした。

手裏剣はあまり投げられていない

忍者と言えば手裏剣を投げるというイメージも強いです。 しかし実際の忍者はほとんど手裏剣を投げることはなかったと考えられています。

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一般的な手裏剣のイメージは上図のものだと思います。 このような形の手裏剣を「車剣」と言います。

車剣は投げて使う武器で固い木にも刺さる危険な道具ではありますが、これが刺さって致命傷になることはほとんどありません。 それに沢山携帯するとかさばる上にガチャガチャと鳴るので大量に持ち歩けない一方、投げてしまうと回収は難しいです。

そんな事情から手裏剣はあまり投げられなかったと考えられています。 しかし手裏剣が使われなかったという訳ではなく、握って使われていたと考えられています。

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このような棒状をしている手裏剣を「棒手手裏剣」と言います。 そして実際に多く使われていたのは、車剣ではなく棒手手裏剣だと考えられています。

棒手手裏剣は普段は隠し持ち、手で握って相手の急所を突きさす武器です。 まともに刺されば致命傷となり、投げることも可能でその貫通力は車剣と遜色ありません。

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このような完全に握り込んで使う武器を「クナイ」と言います。

クナイは棒手手裏剣をさらに大きく握りやすくしたもので、隠したり投げたりするのは難しいです。 しかし手に握り込んで武器として使える他、壁に突き刺して登ったり、地面を掘るのに使ったりと色々な用途に使えます。

何にせよ手裏剣は正面からの戦闘に武器として投げるためのものではないということです。 投げることはあまりなく、投げたとしても相手を怯ませて逃げるためのものなのです。

リアル指向の忍者は夢も希望もない地味な働きをしていると言えます。 それよりは分身したり火を吹いたり大量の手裏剣を投げて戦う忍者の方がウケがいいのは仕方ありません。

「忍者や忍術はそんなものではない」という批判も時々見られますが、フィクションは面白い方が正義ですからね。 そんな事情で忍者はイメージは実際のものと少しズレてしまっているのでした。

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