世界一人が死んだ山はエベレスト…ではなく日本の谷川岳

mt.tanikawa

最も多くの人が死んだ山と言われて思いつくのはどこでしょうか? 世界最高峰のエベレスト?登山が困難と名高いK2?

いいえ違います。 最も多くの人が死んだ山は谷川岳という標高1977mの山で、名前から察せる通り日本にある山です。 1931年から800人以上の死者を出している魔の山なのです。

世界最高峰の山は意外に死亡者は少ない

ichinosawa

「人が死ぬ山」と聞いたら、エベレストやK2のような山を思い浮かべる人が多いと思います。 マイナス数十度の気温、薄い酸素、険しいルート、「デッドゾーン」と呼ばれる標高8000m地帯、雪崩や滑落の危険性など、命に関わる要素がいくつもあります。 熟練の登山者が万全を期しても悪くすれば命を落としてしまいうような厳しい環境です。

しかしそのような山は登山者の数は限られ、登山人気が高く登頂者数の多いエベレストでも年間登山者は700人程度しかいません。 富士山は20万人、高尾山なんて200万人を超える登山者がいることを考えると少ないですね。 また難易度の高い山は登山者のレベルや意識も高く、熟練のシェルパ(ガイド兼荷物持ち)が側に付きます。

エベレストは登頂ルートが確立されていることもあり、ここ20年ほどの登頂者の死亡率は1%程度と言われています。 700人の1%は7人ですのでそれなりに死者を出す山ではありますが、イメージほど多くの人が死んでいる訳ではないのです。

もちろん死亡率の高い山も存在し、例えばK2などは今まで300人ほどの登頂者がいますがその1/4は還らぬ人となっています。 K2は現在8000m級の山としては唯一冬季登頂者がいない山であり、非情の山として知られています。

しかし死亡率の高い山の登山者は母数がそう多くはないため、死者数も低く抑えられています。 それでは世界一人が死んだ山はどこなのかと言えば、意外にも日本の山なのです。

世界で最も多くの死者を出した山・谷川岳

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8000m級の山々を超える死者を出した山が日本にあります。 それが「 魔の山」とも呼ばれる、私が知り得る限りで世界一多くの登山者が死んだ山「谷川岳」です。

谷川岳のほど近くに慰霊碑が建てられており、周辺で事故死した人の名前が刻まれています。 統計を取り始めた1931年以降の人々の名が刻まれているのですが、その数はなんと800人を超えます。 つまり800人以上の登山者が亡くなった山ということです。

統計を取り始めた1931年からの死者数は800人を超え、ぶっちぎりのワースト記録としてギネス認定されています。 ※ギネスワールドレコードデータベースを確認しましたが、記録が見つかりませんでしたので記述を訂正しております。

谷川岳は群馬県にある標高1977mの山で日本百名山の一つです。 谷川岳の一ノ倉沢は日本三大岩場の一つであり、ロッククライミングの聖地とされています。

しかし同じ三大岩場である穂高岳(長野県)と剱岳(富山県)と比べても、谷川岳は群を抜いて死者の数が多いです。 これは首都圏からのアクセスが良かったことが原因に挙げられます。

谷川岳での事故の多くは戦後~昭和中期の登山ブーム期に起きたものです。 事故のほとんどは一ノ倉沢のロッククライミングルートで起きています。

一ノ倉沢は岩が脆くてピッケルを打ち込みにくい上に滑りやすい場所です。 また天気が変わりやすく、特に冬場は頻繁に雪崩が起きる雪崩の巣として有名です。 しっかりした技量・知識・装備があればともかく、碌な経験のない素人が気軽に行って良い場所ではありません。

谷川岳は首都圏から日帰りで来る人や、週末に仕事を終えた足でそのまま向かう人も多かったそうです。 そしてその中には自分の技量と登山ルートが釣り合わない、無謀登山となる人も多く存在しました。 その結果、毎年何十人もの登山者が帰らぬ人となってしまった訳です。

こうした動きを受け1963年には「群馬県谷川岳遭難防止条例」が制定され、登山届の提出の義務化がされました。 また色々な事故を通して「危険な山」という認識も徐々に広がり、昭和の終わりごろには遭難件数は低下し、死亡事故こそなくならないもののその件数は落ち付きを見せています。

まとめると谷川岳が世界一の死者を出した山である理由は、昭和の登山ブームに乗っかった無謀登山者が多かったのが要因という訳です。 とはいっても今ほど情報が整備されていた訳ではなかったでしょうし、ある程度は仕方なかった面もあったのかもしれません。

しかし今日においても谷川岳に限らず、無謀な登山を敢行する人は少なくなっても絶えることはありません。 「自分は大丈夫だと思った」「前から計画していたことで中止できなかった」「何も考えていなかった」などで遭難や事故に逢い、最悪死んでしまう人も珍しくありません。

ハイキングコースでもない限りは「登山は危険を伴うもの」と認識して、無謀登山にならないように心がけたいものです。

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