世界の流行色はインターカラー(国際流行色委員会)が決めている
服を買いにいくと「今年の流行色は~」とか店員に説明を受けます。 誰しも一度は「何で未来の流行が分かるんだよ、誰が決めてるんだ」と思ったことがあるでしょう。
実は流行色はインターカラー(国際流行色委員会)が決めているのです。
インターカラーが決める流行色
インターカラーは1963年に発足された委員会で、フランス、イタリア、中国、日本など様々な国が加盟しています。 委員会は流行の元となる「流行色」を決めるのが主な目的であり、年2回各国で話し合って2年後の流行色を20~30色ほど決めます。
そうして決められた流行色をもとに各国で服飾品が考案され、1年ほどで業界内で試作品の展示会が行われます。 さらに半年後に消費者に向けた発表があり、テレビや雑誌などのメディアに取り上げられます。 そうして流行色の選定から2年後に商品が市場に並ぶのです。
デザイナーからすれば最新のファッションは「2年前に色を決めて1年前に作ったもの」と言えます。 トレンドは「流行るもの」ではなく「流行らせるもの」という意味合いが強いのです。
なぜ自然な流行に任せず業界で流行を管理するのかと言えば、業界の売上を確保すべく「陳腐化戦略」という仕掛けをしているからに他なりません。
消費者に新しいものを買わせる陳腐化戦略
服は着ようと思えば数年間は着続けられる程度には丈夫に作られています。 ファッションに無頓着な男性であれば、2~3年間、長いと数十年間ほど同じ服を着続けることもあるのではないでしょうか。 服の耐用年数は意外に長く、10年以上もつものも珍しくありません。
しかし服を大切に着続ける人ばかりだと服飾業界の人は商売上がったりです。 そこで用いられるのが「陳腐化戦略」です。
陳腐化戦略はある程度の期間が過ぎた時に商品を「陳腐化」させてしまう戦略です。 服飾であれば「流行遅れ」の烙印を押し、ダサい・古いなどのイメージを付けて着にくくしてしまいます。 だから毎年同じ流行にはならずに切り替えられるのです。
服を捨てる理由が「もう着ることができないほど消耗したから」という人はそう多くいません。 大抵は「流行遅れだから」「古臭いから」と、まだ着ることができる服を捨てることが多いのではないでしょうか。 流行を切り替えて古い物を陳腐化させ、新しいものを買わせるのは代表的な陳腐化戦略です。
業界はテレビやメディアなどに広告を出し、定期的にトレンドを発信して流行を作りあげます。 メーカーは次のカラートレンドを元に商品を開発し「今年の夏の流行はこれだ!」のようなキャッチコピーで売り出しをかけます。 国際流行色委員会が決めたカラートレンドは、流行の大本になっているのです。
こう考えると「流行に乗るのは馬鹿らしい」と少なからず思いますが、自分はともかく他人の目を考える以上は乗らざるを得ません。 ファッションに気を付ける人は、流行遅れの服を着る人に対する評価が厳しくなります。 「人を見た目で判断するな」とは言いますが、実際は9割見た目で判断されてしまいますからね。
これはプライベートだけでなくビジネスシーンにおいても言えることです。 人目を気にしなくていい生活を送っているのでもない限りは、バカバカしいと思いつつもトレンドを無視するのは難しいでしょう。
そういった流行に付き合いたくない人が取れる手段はせいぜい「流行とあまり関係ない服を選ぶ」ぐらいです。 しかしこれは陳腐化しにくい反面、ファッションに敏感な人からの評価が低くなる可能性は否めません。 相手やシーンを想定して流行の服と長期間着れる服の両方を購入するなど、賢く選択したいものですね。
ちなみに陳腐化戦略は服飾に限ったことではなく、家電、電化製品、車など様々なものに広く用いられています。 服であれば流行を軸に展開されますが、例えばPCであれば機能追加や性能向上などで陳腐化を図ります。
「服飾業界の流行に踊らされるのはバカバカしい」と言う友人がいますが、彼はIT業界の流行に思いっきり踊らされ、使こなせないオーバースペックの最新PCやスマホを購入しています。別に流行に乗ることが悪いとは思いませんが、踊らされている他人を笑ったら自分も踊っていたというのは不格好です。他人を笑う前に自分の行動を顧みてみましょう。