カゲロウは成虫になると口が退化し、食事ができずに死ぬ
昆虫には寿命自体は結構長いのに成虫として生きられる期間は短いものが多いです。 例えばトンボやセミは幼虫として数年過ごしますが、成虫として生きられる期間はほんの1~2か月程度しかありません。
しかしそんなトンボやセミの成虫ですら長生きに見えてしまう昆虫がいます。 それがカゲロウで、なんと成虫になって数時間~数日で死にます。成虫になると口の機能が低下してエサも食べられなくなるという、とんでもない昆虫なのです。
繁殖のための成虫化を突き詰めたカゲロウ
幼虫としての寿命は長いのに成虫としての寿命が短い昆虫は、その短い成虫の期間を繁殖活動に充てます。 成虫になって周囲を飛び回って繁殖相手を探し、交尾・産卵するとおおよそ生涯は終わります。 成虫期間は繁殖活動のためにあると言っても過言ではありません。
なぜ寿命を削ってまで成虫になるのかと言えば、繁殖相手を見つけるためです。 モゾモゾとしか動けない幼虫のままでは活動範囲が限られるので、その中で繁殖相手を見つけるのは難しいですからね。
子への教育や親の庇護が不要な動物は、繁殖相手を見つけて交尾・産卵すればその命の役割は大よそ終わります。 カマキリなどは交尾後にメスがオスを食べてしますが、どうせオスも長く生きられないので命の有効活用をしているとも捉えられます。 人間目線では残酷なようにも見えますが、オスを食べて栄養を確保することで多くの子孫を残せるようになるのですから無駄ではありません。
さてこの「成虫となって繁殖する」ことを至上命題とした場合、繁殖までこぎ着ければ死んでも問題ないと考えることができます。 それを極限まで突き詰めたのが「カゲロウ」です。カゲロウは成虫になってすぐに繁殖活動を行い、ほんの数時間~数日で死んでしまいます。
カゲロウの成虫は1日で死ぬ
カゲロウの寿命は大体の種が半年~1年程度ですが、そのうち99%以上が幼虫の期間です。 カゲロウの幼虫は水生昆虫であり、藻を食べるもの、堆積物を食べるもの、他の昆虫を捕食するものなど種によって様々です。 そして成虫になると羽虫となり空を飛ぶようになりますが、どのカゲロウも大抵が成虫になって数日内に死にます。
成虫になると口がほとんど機能しなくなり、エサを食べることすらできなくなります。 カゲロウはまさに繁殖するためだけに成虫となり、次代を残す役目を果たすとその生涯を終えるのです。
成虫となって長く生きられない昆虫は沢山いますが、カゲロウのようにエサを食べることすらできず1日で死ぬなんて極端なのはそうはいません。 カゲロウは何を思って成虫になって死んでいくのでしょうね。
カゲロウの生き様にはある種の哲学を感じさせられ、儚さの象徴とされることも多いです。 まあ一個体を切り抜いて見れば儚さを感じるのかもしれませんが、実際の交尾現場に出くわすと大群でいるので全然儚く思わないんですけどね。
ちなみにカイコガやヨナグニサンなども成虫になると口がなくなることで有名で、カゲロウと同じくエサが食べられないため長生きできません。 それでも数日は生きられるのでカゲロウよりは長生きでしょうか。
ウスバカゲロウはカゲロウではない
ウスバカゲロウは名前にカゲロウと付いていますが、カゲロウとはそれほど近い関係にありません。 カゲロウがカゲロウ目なのに対してウスバカゲロウはアミメカゲロウ目に属しており、似ているのはひらひらとした飛び方だけで見た目からして全然違います。
ウスバカゲロウは成虫になった後も普通にエサを食べて2~3週間ほど生きます。 カゲロウとは大違いですね。
ちなみにアリジゴクが成虫になるとウスバカゲロウになります。 ウスバカゲロウの幼虫全てがアリジゴクという訳ではありませんけどね。