うるさくても会話ができる「カクテルパーティー効果」と「選択的注意」
飲み会でガヤガヤ盛り上がっていると、時にお店や周囲のお客さんから注意がくるほどうるさいです。 しかしその一方で盛り上がっている当人たちは、騒音の中心にいながらも問題なくコミュニケーションを取っています。
なぜそんなことができるのかと言えば、人は自分の聞きたい音・聞きたくない音をある程度取捨選択できるのです。 これをカクテルパーティー会場での出来事にちなんで「カクテルパーティー効果」といいます。
カクテルパーティー効果とは
あなたがガヤガヤ話し声でうるさい場所にいるとします。 「(あーうるせー!)」とイライラさせられるような場所です。
特にあなたが何も音を拾おうとしなければ、そのうるささで何も頭に入ってこないでしょう。 しかし冷静に誰が何を話しているのか意識を傾けてみると、意外に内容を拾うことができます。 またその時こころなしか周囲の騒音がなくなったかのような感覚にもなります。
もっと身近な例で言うと、室内に音の出ているテレビと談笑している家族がいて、あなたは勉強をしているとします。 勉強をしているとテレビの音も談笑も雑音でしかなく、内容は頭に入ってきません。 しかし集中してテレビを見ればテレビの音のみが聞こえますし、家族と一緒に談笑すれば家族の会話しか耳に入ってきません。
このように人は自分の聞きたい音だけを取捨選択して拾えるように出来ています。 自分が浴びた音の洪水の中から、不要な音声を排除して必要な音声だけを拾い上げるのです。 これを「カクテルパーティー効果」といいます。
自分に必要な情報にだけ注意を向ける選択的注意
情報の取捨選択は音声に限ったことではありません。
例えばクラス全員が適当に集まった時、ざっと全員を目で追ったとします。 自分と親しい人や気になる人はすぐに位置を把握できる一方で、割とどうでもいい人はどこにいるのか・そもそもいるのかいないのかも分かりません。
こういった様々な情報の中から自分が必要だと思った情報を選択して注意を向けるのを「選択的注意」と言います。 我々は日ごろから情報の洪水を浴びていて、その全てを処理することはできません。 だから優先順位を付け、自分にとって重要であると判断した情報だけを拾うのです。
商品の営業や選挙の演説などではこれを踏まえた上で、人の選択的注意を惹けるようなキーワードや情報を散りばめて聞いて貰えるように話を作ります。 一度選択的注意を向けてもらうことができれば、ただの雑音が重要な話として伝わるようになるのです。 そうすることによって初めて話を聞いてもらえるようになります。
あなたも相手に自分のことを見てもらいたい時は、まず「いかにして相手の注意を惹くか」を考えてみてください。 身なりに気を付ける、相手の興味を惹きそうな話題を提供する、相手の好きな香りの香水を付けるなど、とにかく相手の選択的注意を向けてもらうことが重要です。 そうすることによって初めてあなたは「ただの雑音」から「重要な相手」になるのですから。
手品などにもこの選択的注意を逆手に取ったものがありますね。 観客が手品のタネを見逃すまいと、ここが怪しいと選択的注意を払っている場所では仕掛けず、無意識に切り落とされるような情報の方にタネを仕掛けます。 こうして観客はタネを見ているはずなのに認識できず、世にも不思議なことが起こったと驚かされるのです。
選択的注意は効率的に情報を処理できる一方で、不要だと判断していたが実は重要なことを見落とす危険も孕んでいます。 例えばあなたがスマホを見ながら道を歩いていた場合、スマホに対して「選択的注意」が発生します。 その結果周囲の情報が不要なものとして遮断され、人とぶつかったり、最悪事故に発展してしまうことがあるのです。
スマホを見ながらや音楽を聴きながらの移動は結構危険な行為なのです。 あまり自分を過信せずに、危険な場所や運転中は慎みましょうね。