マムシは卵を産まずに直接子を産む

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爬虫類は交尾すると卵を産む「卵生」の動物です。 ヘビも爬虫類なので卵を産むのですが、マムシはなんと卵を産まずに子の状態で胎内から出てきます。

それではマムシは哺乳類のように胎生なのかと言えば少し違いまして「卵胎生」という繁殖形態を取っているのです。

ちなみによく言われる「マムシは口から子が出てくる」はデマで、「総排泄孔」という排尿と生殖を兼ねる穴から出産します。 総排泄孔は軟骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類が持つ器官で、排泄と産卵を兼ねた器官です。

卵胎生とは

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卵胎生とは、胎内で卵を孵化させて直接出産する形態のことを言います。 胎生(哺乳類)も言ってしまえば卵を胎内で孵化させてから出産しているのですが、両者の違いは母体が子に栄養を与えて育てるか否かです。

胎生の場合は胎盤を通じて子に栄養を与えて育てることができますが、卵胎生の場合は卵からの栄養しか受け取ることができません。 つまり卵胎生は卵を体の中に入れたままにしているだけという訳です。

なお卵胎生の中には胎生と似たような仕組みで母体から栄養を与えたり、胎児に分泌液などの栄養を経口摂取させたりする形態もあります。 こうなると胎生と卵胎生の境界線はかなり曖昧であり、卵胎生は胎生として一括りにされることもあります。

タツノオトシゴは卵胎生ではなく卵生

タツノオトシゴはオスのお腹から子を産むので有名です。 一見すると卵胎生のようにも見えますが、タツノオトシゴは卵生に分類されます。

タツノオトシゴのメスはオスの保育嚢に産卵し、孵化するとオスのお腹から出てきます。 これはメスの胎内で孵化させて出産している訳ではないので、卵胎生には区分されません。 あくまで胎内で孵化させてから出産するのが卵胎生なのです。

卵胎生を採用している理由

卵胎生は生物全体でみると「いることはいるけどそう多くない」ぐらいのやや珍しい繁殖形態です。 なぜ卵胎生なんて形態を採っているのかと言えば、もっとも脆弱な状態である卵を守るためと言えます。 どんなに強力な動物でも卵の状態では卵の殻しか守るものはなく、殻を破る動物に見つかればアウトです。 産卵後に親が卵を守る手もありますが、親の隙を付いて食べられることもままあります。

しかし卵胎生なら親の胎内で卵を守ることができるので卵を食べられることがなく安心です。 最も脆弱な状態である卵を飛ばして産まれることができるので、出産できる数こそ少なくなりますが生存率が飛躍的に上がります。

ところが卵胎生を採用している動物はそう多くありません。その一番の理由はある程度強力な生物でないと成り立たない形態だからです。 いくら卵を母体が守っても、母体が襲われて食べられてしまっては意味がありません。だから強力な捕食者や毒を持つ生物などに見られることが多いです。

卵胎生の有名どころはマムシやコブラなどの毒蛇、サメ、サソリ、エイなどの一部ですかね。どれも簡単に襲われてやられるような動物ではないですね。 この強さがあるから胎内の卵を守れるのです。

まあ実際のところは強さは必要条件ではありますが、他に理由があると考えられる場合もありますけどね。 例えばマムシは地温で卵を温めて孵化させますが、寒い地域では地面が冷たくて孵化できないので胎内で育てているのではないかと考えられています。

ちなみにアブラムシも卵胎生です。 アブラムシは前述したような強力な生物ではなくテントウムシにすら食べられてしまうほど脆弱ですが、それを補って余りある特性を持っています。 「メスは交尾不要であらかじめ妊娠しているメスの子を産む」という無茶苦茶な能力を持っているため、1匹のメスから大量発生することが可能になっています。 数で勝負しているから母体ごと食べられても些細な問題という訳です。

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