真っ赤な身のサケ、実は赤身魚ではなく白身魚

サケは日本の代表的なおかずとして愛されている赤い身をした魚です。お米のお伴としてはもちろんパンや麺にも合うので、料理の和洋を問わずに大活躍しています。

サケの切り身は鮮やかな赤色ですが、実はこのサケは赤身魚ではなく白身魚に分類されています。真っ赤な身なのに白身魚とはおかしな話と思うかもしれませんが、これには理由があるのです。

赤身魚と白身魚は筋肉の色で決まる

多くの人は赤身魚と白身魚を、文字通り「身が赤いから赤身魚、白いから白身魚」だと考えています。大体それで合ってはいますが、厳密には違うのです。

まずはそれぞれ代表的な魚を挙げてみましょう。

赤身魚	白身魚
イワシアジサンマカツオブリマグロカジキ	フグヒラメ・カレイハモタイタラうなぎ・アナゴサメ

魚の生態をよくご存知の方はこの分類表を見てピンときたかもしれません。赤身魚には活発に動き回る魚が、白身魚には普段じっとしていてあまり動き回らない魚が多いです。これが赤身魚と白身魚を分ける要因になっています。

動物は運動する際に酸素を必要とし、活発に動き回るにはそれだけたくさんの酸素が必要になります。その役割を果たしているのがミオグロビンという赤いタンパク質です。

活発に動き回る魚はミオグロビンをたくさん持っているから赤身魚となり、あまり動かない魚はそれほどミオグロビンを持っていないから白身魚となります。もちろん白身魚にもミオグロビンはありますが、赤身魚と比べるとその含有量に10倍以上もの差があります。

赤身魚か白身魚かは、ミオグロビンによって身が赤くなっているか否かによって分類されています。たとえ身が赤くても、それがミオグロビンによるものでなければ赤身魚ではない訳です。

魚を色で分ける呼び方には、他に「青魚」があります。青魚とは背中が青っぽい赤身魚のことを言います。

青魚には色々な種類の魚がいますが、これは浅い海域を泳ぐ魚にとって保護色となり生存に有利だからです。上空の鳥には青い背、深海の捕食者には白い腹で海に紛れています。

サバ、サンマ、イワシなどが青魚の代表格です。

サケの身にはミオグロビンがあまり含まれておらず、白身魚に分類されています。それではなぜサケの身が赤くなっているのでしょうか。

その答えはサケの食べ物にあります。サケが普段食べているエビやプランクトンなどの甲殻類の殻にはアスタキサンチンという赤い色素物質が含まれており、これを食べているせいで身が赤くなっています。サケの卵（＝イクラ）が赤いのも大体アスタキサンチンのせいなのです。

サケも稚魚の時点ではエサからアスタキサンチンを取り込んでいないため身が白いです。外海で食事をするうちにだんだん赤くなっていきますが、アスタキサンチンがないエサを食べて成長したサケは身が白いままのこともあり得ます。なので人工的に白身のサケを作ることも可能です。

釣り人が時々「釣ったサケを捌いたら身が白くてびっくりした」なんて話すことがありますが、あまり甲殻類を食べなかったサケなんでしょうね。一見不気味にも思えますが普通にサケなので、おいしくいただきましょう。

サケは英語でサーモンと言います。ならばどちらも同じものを指しているはずなんですが、どちらの呼称も使われているのは違和感がありますよね。

実はこの二つ、日本においては天然物か養殖物かで分けて呼ばれています。

サケと呼ばれているのは天然物です。天然物は広い海を泳ぎ回っているため、脂が少なく身が引き締まり、また香りも良いです。

ただし寄生虫がいる可能性があるため生食は危険です。なので調理済みのものや火を通してから食べる前提で売られているものをサケと呼びます。

サーモンと呼ばれているのは養殖物です。管理された環境で育つので、脂がよくのっていて旨味が強いです。

寄生虫の危険が少なく、また念のため一旦冷凍しています。旨味が強いことも生食に向いており、主に刺身や寿司などに使われるものをサーモンと呼びます。

鮭のことをサケと呼んだりシャケと呼んだりします。これらは方言の違いぐらいの話で、どちらも同じものを指しており、どちらが正しいということはありません。