イルカの祖先は地上で生活していた

水中のイルカ

水族館やイルカウォッチングで大人気のイルカ。 知能が高く人とのコミュニケーションも取れるため、触れ合える動物として大人気です。

しかしこのイルカ、大昔は海ではなく陸で生活していました。 イルカやクジラは進化の過程で海から陸へと上がり、また海へと戻っていった動物なのです。

イルカはウシやカバの仲間

海上に飛びあがるクジラ

イルカやクジラは生物分類で「鯨偶蹄目」というグループに属しています。 これは名前の通りクジラも属しているグループで、実はイルカとクジラに明確な違いはありません。 乱暴な理論では体長が4m以上がクジラで未満がイルカだなんて分類もされるぐらいです。

さてこの鯨偶蹄目、なんとカバやウシなどの陸上動物も入っています。 つまりイルカはクジラやカバに近い仲間と考えられている訳です。

イルカとクジラはともかく、カバやウシは陸上生物だからイルカの仲間ではないように思えますよね。 でもよくよく考えてみてください。水中生活しているイルカが肺呼吸しているのはおかしいと思いませんか?

生物は元々は海で生まれ、海中で呼吸をしていました。 そのうち一部が陸上で生活するために空気中で呼吸できるように進化して肺呼吸になった訳です。 肺呼吸は陸上動物特有のものであり、水中で生活する分には不要なもののはずです。

つまり水中で生活しているイルカやクジラが肺呼吸なのは、進化の過程で陸上に上がって、更に進化して海へと戻っていったからです。

イルカは哺乳類で肺呼吸している

海上にジャンプする二頭のイルカ

イルカは哺乳類で肺呼吸をしています。 魚のように海中で呼吸はできず、呼吸する際には海上まで上がってこなくてはなりません。

イルカが肺呼吸する水棲動物である理由はイルカの祖先と言われている「パキケトゥス」にあります。 こいつは5000万年前に地上にいた面長のオオカミのような動物で、足が4本ありワニのような生活をしていたと考えられています。

パキケトゥスは水辺で水に身を潜めながら狩りをして生活し、それが何世代も続くうちに水中で活動するのに適した進化を遂げました。 やがて完全に水中生活するようになり、それから更に2~3000万年前ほどでイルカへと進化したのです。

イルカの体にはかつて陸で生活していた痕跡が見て取れます。 後ろ足が退化した骨が体内に見られますし、2006年には手の名残である腹ビレが残っているイルカも発見されました。 そして何より肺呼吸であることがかつて陸上で生活していた証拠です。

水棲哺乳類はとても強い

海上にジャンプする二匹のシャチ

水中生活している哺乳類はクジラ、シャチ、イルカ、アザラシ、アシカ、ラッコ、ジュゴン、マナティーなど色々います。 そしてこれらの動物は海洋生物の食物連鎖の中で上位に位置しており、特にシャチは海の覇者として食物連鎖の頂点に君臨しています。

一旦は陸上に適応して肺呼吸になったのに、海に戻って覇権を取ったのはなんとも不思議ですよね。 これは骨の強さに起因しています。

陸上生活では重力の影響をモロに受けるので、体をしっかりと支える丈夫な骨が必要になります。 対して水中生活では浮力によって浮き上がれるので、それほど丈夫な骨は必要ありません。

陸上生活に適応して再び海に戻っていった哺乳類たちは、海中生物とは比較にならない丈夫な骨を手に入れていました。 やがて海中生活に適応すると丈夫な骨に支えられた強靭な体を手に入れ、海において繁栄できたのです。

海の強い生物と言えばサメが思い浮かびますが、実はサメはシャチやイルカに比べると全然弱いです。 まともに体当たりでぶつかるとサメは骨折して重傷を負ってしまいます。

そんな事情で海に出戻った哺乳類は繁栄できたのです。 ちなみに海の最強生物はシャチで、サメやクジラをエサにして生活しています。 イマイチ影が薄いのは生息域が南緯40度以南で、多くの人間の生活圏から外れているためでしょうね。

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