ハンバーガーやピザの原価は安くない
宅配ピザやハンバーガーなどは「原価は100円だけど1000円で売ってる」のような話があります。 しかしこれは原価の訳がない金額です。もしかしたら材料費(=原価のごく一部)の事を原価と言っているのかもしれませんけどね。
原価とは製品を制作するのにかかる諸費用を全て計上したものです。 調理担当者、店舗の賃貸料、光熱費などもひっくるめて原価となるので、そこまで定価と乖離するはずはないのです。
原価の噂話
誰しも一度は「あのお店は原価100円のものを1000円で売ってる!」「3000円の宅配ピザの原価は150円!」などの類の話を聞いたことはあるかと思います。 原価の数倍の価格設定は当たり前、酷いものだと10倍以上乖離している話も聞きます。
「ドリンクはただで仕入れている!」とか「むしろコカ・コーラ社が金を払って置いて貰ってる」なんて話も聞いたことがありますね。 仮にこの話が本当ならドリンク会社の経営は成り立っているのでしょうか。クレジットカードの手数料か何かと勘違いしていないですかね。
もしかしたら商品の中のごく一部にはそのような原価に対して価格設定が凄まじく高いものが混じっているかもしれません。 しかし全体として見るとそんなに原価と乖離した価格設定はされていないことが分かります。 原価は決算資料を見れば書いているので確認してみましょう
決算資料の売上原価と噂話の原価の乖離
商品の価格に対する原価
それでは噂話を検証すべく、まずは決算資料を見てみましょう。 上場していないと公開されていませんので、適当に有名チェーン店の決算公告ページを開いてみてください。
決算資料に「損益計算書」という表があるので、そこに書かれている「売上高」「売上原価」に注目してください。売上高とは「当期に売った全商品額の総計」、売上原価とは「全商品を作るのにかかった費用=原価」です。
本稿はドミノピザの2016年6月期 決算公告および、マクドナルドの第14期決算公告(平成28年3月31日)を参照して書きます。
「売上高 / 売上原価」はドミノピザが「33,424,256 / 12,033,131(千円)」、マクドナルドが「189,473 / 189,447(百万円)」とありました。つまりドミノピザの商品の原価は価格の1/3程度、マクドナルドの商品の原価は価格とほぼトントンという事です。
これは商品全部ひっくるめての計算になるので、中には原価比率の良い商品もあるでしょう。 しかし「3000円のピザの原価が150円」など、主力商品の原価が1割以下に設定されている話は無理筋ですね。もしこれが本当ならどれだけ原価率悪いサイドメニュー売ってるんだよって話になります。
商品には販売・管理費もかかる
次に販売管理費の話もしましょう。
前項にてドミノピザの原価は定価の1/3と言いました。 3000円が150円ほどではありませんが、一見するとそれなりにぼったくっているように思える価格設定です。
しかし商品は店を構えて作るだけで売れる訳ではありません。 損益計算書の売上原価のすぐ下にある「販売費及び一般管理費(販管費)」に注目してください。
これは「商品を売るのにどれだけかかったか」を示しています。 例えば宣伝費や配達にかかった費用は販管費として計上されています。
ドミノピザはマクドナルドと比べて多くの販管費がかかっています。 これは「宅配ピザ」という販売スタイルである故にかかる費用、つまり宣伝費(CM・チラシ)や配送料にかかる部分が大きいのが理由でしょう。
原価に販管費まで加えると売上に対して残るお金は、ドミノピザが約1/30、マクドナルドなんて赤字です。両社ともそんなアコギな価格設定はできていないことが分かりますね。
やたらと安い原価の噂話は材料費のみで考えている
ピザやハンバーガーの原価は決して安くはありません。 それなのに「ピザは原価100円!」の類の噂話が出るのかと言えば、材料費のみを原価と捉えている人が多いのではないかと考えられます。
材料費とは原価の中の1つで、商品を直接構成する材料にかかった費用のみを計算したものです。 ハンバーガーならバンズ、ハンバーグ、レタス、トマト、ピクルス、包装紙などが材料費にあたります。
しかし実際に商品を作る際には材料費以外にも諸々の費用がかかります。 店員の人件費、店舗の賃貸料、光熱費、設備や道具の減価償却費など、商品を作るのに必要だった全ての費用が原価です。他にも販管費や他の諸経費もかかります。
お店の商品の価格には、それらを全てひっくるめても利益が出せるよう設定されています。 ただ消費者としては安い材料から出来たものを高く買うことになるので、これをバカバカしく思うのなら自炊しましょうとなる訳ですね。