逮捕と有罪はイコールではない!逮捕と書類送検の違い

eyecatch

「逮捕」と聞くと、何か犯罪を犯した人が警察に捕まったようなイメージがあります。 ちょうどサスペンスドラマで犯人が分かったら「逮捕する!」と言って手錠をかけ、警察がしょっ引いていくような感じです。

このイメージからか逮捕=犯罪者のような認識の人が多いのですが、実際のところは必ずしもイコールではありません。 もちろん逮捕されて罪になることもありますが、逮捕されても無罪になることもあれば、逮捕されずに有罪になることもあるのです。

警察と検察の領分の違いと、罪が決まるまで

国の治安維持を担当しているのは主に警察と検察で、どちらも犯罪(刑事事件)を取り締まることで国の平和を守っています。 二つの組織の違いは担当する領分の違いで、警察は捜査を、検察は刑事訴訟を担当しています。

刑事事件が発覚すると、まず警察が捜査を行います。 現場検証したり、目撃者や関係者から話を聞いたり、証拠集めをしたりする訳ですね。 そして一通り容疑が固まったら、検察に容疑者と捜査情報を送ります。

検察は警察から受け取った情報を元に捜査を行い、容疑者や証人たちからも話を聞いて情報を精査します。 そして検察は容疑者を裁判所に「起訴」または「不起訴」にする決定をします。

容疑者が起訴された場合は刑事裁判となり、検察側と容疑者側に分かれて裁判で争います。 そして裁判官が有罪/無罪なのか、有罪の場合は量刑はどのぐらいなのかの判決を下します。

MEMO

裁判は「民事訴訟」と「刑事訴訟」に分かれています。

民事訴訟は個人や企業の不法行為を巡って争うものであり、誰でも起訴できるし負けても有罪になったりはしません。

刑事訴訟は被告人が犯罪を行ったのか、もし有罪なら量刑はどの程度かを決めるものであり、起訴できるのは検察官だけです。

以上が簡単な流れですが、関連トピックをいくつか補足しておきます。

逮捕と書類送検

警察は捜査の段階で容疑者を逮捕することがありますが、必ずしも逮捕する訳ではありません。 逮捕が必要と考えられる場合にのみ逮捕します。

逮捕が必要なのは、まず容疑者が逃走や証拠隠滅を図る可能性がある場合です。 これは拘束しておかないと何をするか分からないので、当然逮捕して拘束しておく必要があります。

また容疑者の安全を考慮して逮捕する場合もあります。 例えば酷い死亡事故を起こしてしまった場合、容疑者が自暴自棄になったり、自責の念から自殺してしまうこともあり得ます。 そういったことを防ぐ意味もあるのです。

逮捕する必要性が特にない場合、警察は容疑者を逮捕せずに捜査を行って検察に引き継ぎます。 このように逮捕せずに検察官送致することを「書類送検」と言います。

そして「逮捕」「書類送検」いずれの場合も有罪・無罪はまだ確定していません。 それを決めるのは刑事裁判であり、逮捕されたからイコール有罪という訳ではないのです。

起訴と不起訴

検察官は情報を精査して容疑者を起訴するかどうか決めます。 不起訴になるのは以下の場合です

  1. 罪とならず:犯罪として成立していない
  2. 嫌疑なし:容疑者が犯人ではない
  3. 嫌疑不十分:容疑者を犯人と決める証拠が不十分
  4. 告訴取り下げ:親告罪の被害者が告訴を取り下げた
  5. 起訴猶予:事情を考慮して起訴しない

もし不起訴になれば容疑者はの容疑は晴れ、無罪放免となります。

起訴されて刑事裁判になった場合も、無罪判決が下されることもあります。 ただ日本の刑事裁判の有罪率は99.9%と言われており、無罪判決が下されるのは中々稀なケースです。

有罪率が高いのは検察が有罪にできる見込みの高い事件のみを起訴しているためです。 逆に言えば有罪にできるか分からない事件について、検察は起訴を敬遠する傾向にあると言えます。

日本の刑事訴訟の有罪率は諸外国と比べて極めて高い水準にあり、それを問題視する声もあります。

有罪と無罪

不起訴または無罪判決が下された場合、容疑者は無罪となります。 要は「犯罪なんてしていなかった」ということであり、ペナルティは一切ありません。

有罪となった場合、罰金刑や懲役刑が課せられます。 懲役とは刑務所に収監されて強制労働することを意味します。

また懲役刑には「執行猶予」が付くことがあります。 これは軽い犯罪や犯人の事情を考慮して、懲役刑の執行を待つ制度です。

例えば懲役2年・執行猶予3年となった場合、ただちに刑務所に収監されることはなく普通に暮らすことができます。 そして執行猶予の3年間を何も犯罪をせずに過ごせば懲役刑は免除されます。

ただし執行猶予期間中に新たな犯罪行為をした場合、執行猶予は取り消されて刑務所に収監されます。 その際の懲役期間は2年と新たな犯罪の合算分となります。

重犯罪や犯人に反省が見られない場合は、執行猶予は付かずに直ちに懲役刑となります。 執行猶予なしの懲役刑を「実刑」と言います。

犯罪報道は頻繁に聞く割に、内容を勘違いしている人の多い分野です。 とりあえずこれだけ抑えていれば、報道の言わんとしていることは大体分かるのではないでしょうか。

eyecatch

発達障害「ADHD」「ASD」「LD」の基礎知識

その他の記事

eyecatch

副業はデメリットを踏まえた上で賢こく選ぼう

eyecatch

LGBTとは – 意外にややこしい同性愛とトランスジェンダーの基礎知識

eyecatch

人間は平気だけど他の動物やペットには毒になるものまとめ

eyecatch

発達障害「ADHD」「ASD」「LD」の基礎知識

eyecatch

賃貸はあえて変な物件を紹介する!不動産屋のテクニック

eyecatch

「常識破り」になっても「非常識」にならない

その他の記事一覧HOME