送り狼の語源は妖怪・送り狼

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男性が女性と一緒にいる際、遅い時間になってそろそろお開きにしようかとなると「家まで送るよ」と提案することがあります。 夜道は危ないので一緒に帰ってくれるとは何とも紳士的な提案に思えますが、実はこの男性自体が下心アリアリで危険な場合も多いです。

こうした下心を持って女性を家まで送ろうとする男性を「送り狼」と言います。 実はこの由来は妖怪で、名前そのままの「送り狼」から来ています。

送り狼とは

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通常「送り狼」は以下の意味合いで使われることが多いです。

人の後を付け狙う危険な人。
特に親切らしく女性を送り、帰宅途中または女性宅で女をねらう男。

それではなぜこのような人を「送り狼」と表現するかはご存知でしょうか。 多くの人は「途中まで親切だった男がまるでオオカミのように豹変するから」と考えています。 赤ずきんちゃんのおばあさんに化けたオオカミのようなイメージでしょうか。

しかし実は日本各地に伝承がある妖怪「送り狼」がそのままの由来なんですね。 関連して「送り犬」という妖怪もいるのですが、狼が犬になっただけで話はほとんど同じです。 送り狼は以下のような感じの妖怪です。

妖怪送り狼の伝承

夜の山道を歩いている時に後ろを狼が付けていることがある。 それは妖怪「送り狼」で、隙を見せると襲い掛かってきてたちまち食い殺されてしまう。

もし送り狼の前でうっかり転んでしまった時は、休憩するために座り込んだフリをすればよい。

伝承によっては他の獣から人を守ってくれる存在だったり、逆に露骨に人を襲おうとするような存在だったりします。 まあこんな感じの妖怪で、現代の送り狼にも通じるところがありますね。

さてこの妖怪、実は現代においても目にできます。 女性に下心を持った男性の比喩ではなく、夜道を付いてくる送り犬の話です。

送り狼の伝承は犬や狼の持つ習性を基に作られたものだと考えられます。

犬や狼はナワバリに入ってきた人の後を付ける習性を持つ

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犬や狼はナワバリを持って活動しています。 競合相手がナワバリに入ってきた場合、威嚇して吠えたり、時に攻撃したりしてナワバリから追い出そうとします。

しかし人間は競合相手ではないからか、ナワバリに侵入しても問答無用で襲うことはあまりありません。 放っておけばいなくなると知っているか、あるいは襲うリスクの高い相手だと認識しているのかもしれませんね。

ナワバリの境界線で気付いたら威嚇して侵入を止めることもありますが、広いナワバリを持つのでうっかり入られてしまうこともあります。 しかし自分のナワバリに人間がいては気持ちが落ち着きません。

特に巣の場所を知られるのは嫌なので、ナワバリ内にいるのを放置しておく訳にはいきません。 だからナワバリ内に人間が侵入してきたら監視役がやってきて、ナワバリから出ていくまで後ろを付けておかしな事をしないか確認する訳です。

そんな犬や狼の持つ習性を基に作られたのが妖怪「送り犬/送り狼」だと思われます。 伝承では転んで食い殺されたりもしていますが、本当に食い殺されていたらこの話を伝えようがないので創作と思われます。 狼に本気で襲われたらどうあがいても助からないでしょうしね。

なので犬や狼は人間よりもずっと紳士的な送り狼をしていると言えます。 それなのに下心丸出しの男と同列に語られるなんて失礼な話ですよね。 現代の送り狼は妖怪よりも性質が悪いのかもしれません。

ちなみによく似た妖怪に「迎え犬」というのがいますが、コイツは人を迎え撃つかのように高所で待ち伏せして襲い掛かってくる悪い妖怪です。 あちらに襲う気があればわざわざ後を付けたりなんかせず、問答無用で襲い掛かってくるという教訓のように思います。

ニホンオオカミと日本人の関係

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古来の日本では狼は神聖なものと考えられ「大神」の当て字がされることもありました。 農家からすれば狼はイノシシやシカなどの農作物を食べる害獣を狩ってくれるありがたい存在であり、山の神として崇められていた訳です。

世界的には畜産の発展と共に狼は家畜を襲う害獣と認識されるようになっていきました。 しかし日本では仏教による肉食の忌避と畜産しにくい地勢のため、他地域に比べると狼は長らく神聖なものと崇められていました。

しかし明治時代になって牧畜が本格的に始まると、狼は家畜を襲う厄介な害獣と見られるようになっていきます。 また海外から入って来た狂犬病やジステンパーが狼の間で流行ったこともあり、日本のオオカミは急速にその数を減らしていき、1905年にニホンオオカミは絶滅してしまいました。

すると今度は天敵のいなくなったイノシシやシカが爆発的に増えてしまい、農家を悩ませる問題となりました。 農業なんて元々そんなに儲かるものでもないのに害獣による農業被害は莫大な金額となり、対策にかかる費用も少なくありません。 また近年は害獣の数を調整するための猟師の減少も問題になっています。

農家にとって狼はまさしく大神だった訳です。 オオカミを海外から再導入することを提唱している日本オオカミ協会なんてのもありますが、さてどうなるでしょうね。

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