誰が一番悪い?コンセンサスゲーム「無人島での出来事」
コンセンサスゲームとは課題を複数人の合意で意思決定するゲームです。今回お届けするのは「無人島での出来事」です。
コンセンサスゲームには「個人決定よりも集団決定の方が正確で有用」「考え方や価値観の違い」などを気付かせる狙いがあります。 コンセンサスゲームとして複数人でするのも面白いですが、一人でもできるのでぜひ考えてみてください。
一番許せないのは誰?
船が嵐で沈没してしまい、乗員乗客は2隻の救命艇に別れて乗り込みました。 一方には若い女性と水夫と老人が、もう一方には女性の婚約者とその親友が乗っていました。
若い女性の乗った救命艇は無人島に漂着しましたが、島には婚約者の救命艇は来ていないようでした。 少し離れた場所に似た島があったので婚約者がいるかもと思い、水夫に隣の島へと連れて行って欲しいと頼みます。
水夫は一晩を共にすることを条件に出してきました。 女性は悩み老人に相談しますが、老人は「私には判断できないので、あなたが考えて判断しなさい」と助言しました。
若い女性は水夫と一晩を共にし、水夫は約束通り女性を隣の島へと運びました。 島には婚約者がおり、互いに駆け寄って抱き合いました。
そして女性は迷いながらも水夫に抱かれたことを婚約者に打ち明けます。 すると婚約者は落胆し、彼女を突き飛ばしてどこかに去ってしまいました。
悲しむ女性に婚約者の親友が近づきこう言いました。 「僕からいつか婚約者に話すから、それまで僕が君と一緒にいてあげるよ」
これら5人を許せない順に並べてみてください。
解説編
まずこの問題には正しい回答なんてものはありません。 コンセンサスゲームの目的のひとつである、自他の視点や価値観の違いを認識させる狙いの強い設定です。
またこの設定、模範解答がないからかセンシティブな内容だからか知りませんが議論が荒れやすいです。 まあ荒れるほどに白熱するのもコンセンサスゲームの本懐なのかもしれませんけどね。
せっかくなので私の考えでも書いておきます。
1.水夫
無人島での出来事の引き金を引いたと言える人物です。 立場の弱い相手に酷い条件の取引を持ち掛けるのは感心できません。
ただし女性が無茶苦茶なお願いをしているという点は考慮せざるを得ません。 水夫とて遭難者であり余裕がない状況のはずで、そんな中で「あっちの島に彼氏がいるかもしれないから連れてって」なんてことを言われても困るでしょう。
もしかすると一晩を共にするという条件は、無茶なお願いを断るための方便だったのではとすら思います。 まあそんな気持ちがあったとしたら話を断るべきなので、ランキングトップなのは揺るぎませんが。
2.婚約者の友人
婚約者に突き放されて傷ついた女の心に漬け込もうとするクズ男のムーブ感が強いです。
ただし純粋な親切心や庇護欲から出た言動である可能性も否定できません。 この描写だけでは分かりづらいので、確定判断にはもう少し先の状況を見たいですね。
3.若い女性
やらかし度は高いのですが、極限状態で冷静な判断ができなかったとも考えられるのでこの位置にします。
婚約者が心配、あるいは婚約者に会いたくて居ても立っても居られないは分かります。 しかし会えたところでどうなる訳でもなく、いるかも分からない島へ行くために水夫の言いうことを聞いたのは軽率すぎるでしょう。
4.婚約者
女性のカミングアウトに失望するのは当たり前の反応であり、極限状態下では感情が強く出てしまうのも仕方ありません。 ここで女性に寄り添えないのはそれほど責められる要素ではないでしょう。
時間を置いて頭が冷えてからの言動次第という印象です。 このまま問答無用で拒絶し続けるなら狭量すぎると思いますが、一定の理解を示したり、なんやかんやで許す可能性も残っているように思います。
5.老人
年の功を思わせる常識的でお手本のような回答をしたのみなので順位は低めです。
ただ女性の判断次第で荒れる未来は見えていたはずなので、それを警告するような助言が一切なかったのは不親切ではあります。 巻き込まれないための立ち振る舞いに徹した事なかれ主義者いう印象です。
補足
このゲームは議論によって視点の抜けは埋めることはできます。 しかし材料が出そろった後の価値観の違いはどうにもなりません。
多くのコンセンサスゲームは模範解答がありますが、この課題には明確な指標となる正しさは存在しません。 それ故に同じ材料なのに違う結論が出る=価値観の違う相手と合意を作るのは簡単ではありません。
そこが無人島での出来事の難しさであり面白さであると思います。