全身に金箔を塗っても窒息死はしない
ひと昔前「祭りで体に金箔を塗った人が皮膚呼吸できずに窒息死した」など、皮膚呼吸を妨げたために死んだ話がまことしやかにささやかれていました。
でも皮膚呼吸できないと死ぬのなら長時間水に入っていただけで死んでしまうことになります。 よくよく考えるとおかしいですよね。そう、この話は有名なデマなのです。
人間の皮膚呼吸はごく少量で、止まっても問題ない
「体中に金箔や絵具を塗ると皮膚呼吸できなくなってやがて死ぬ」という話を聞いたことがあるでしょうか。 実はこの話、都市伝説やデマの類です。
多くの動物は皮膚や粘膜で呼吸する「皮膚呼吸」を行っています。 人間も例外ではありませんが、皮膚呼吸の占める割合は動物によってまちまちです。
呼吸の多くを皮膚呼吸で賄っている動物にはカエルやトカゲ、呼吸の全てを皮膚呼吸で賄っている動物にはミミズやヒルがいます。 こういった動物が皮膚呼吸できなくなると死にます。
対して哺乳類が皮膚呼吸で賄う割合は少なく、人間ならせいぜい1%ほどです。 皮膚が呼吸できない状態でも全く問題なく、例えば水中にいても口や鼻で呼吸できれば死にません。
皮膚呼吸の占める割合が大きい動物に絵具を塗ると命の危険があるかもしれません。 しかし少なくとも哺乳類においてはその限りではない訳です。
体に悪影響はある
全身に金粉などを塗ってもすぐに悪影響は出ませんが、発汗や放熱が阻害される可能性はあります。 暑い日に長時間そんな状態でいると体温調整がうまくいかずに熱射病になるかもしれません。
また専用に作られたものでない限りは美容や健康に良くはありません。 お祭りなどで全身に何かを塗る際には、なるべく短時間に留めた方が無難かもしれませんね。
金箔で窒息死が広まったのは映画007のせい?
こんな話が広まった理由は、映画「007/ゴールドフィンガー」の影響が大きいと思われます。
劇中で敵役のゴールドフィンガーは部下の女性が裏切った報いとして全身に金を塗って殺しました。 このとき主人公のジェームズ・ボンドが「全身に金を塗ると皮膚呼吸ができなくなるんです。キャバレーのダンサーなどに稀にあるんですよ」と死因を説明しています。
もちろんそんなことはないのですが、これにより「皮膚呼吸できないと死ぬ」という話が広まり、様々なバリエーションの話が生まれました。 私も「お祭りで全身に金箔を~」とか「文化祭で絵具を~」とか、いくつか似たような話を聞いたことがあります。
こうした話を何度も聞くうちに、人々はまるで実話であるかのように考えるようになったと思われます。