「お疲れ様です」と「ご苦労様です」正しい挨拶はどっち?
相手の労をねぎらう言葉の代表的なものに「お疲れ様です」と「ご苦労様です」があります。 仕事をする上ではこの言葉を挨拶替わりに毎日何回も使うことになるでしょう。
あなたは2つの違いが分かり、使いこなすことができているでしょうか? たとえ知っているつもりでもそう単純にいかないのが世の中です。 少し掘り下げてみてみましょう。
お疲れ様ですとご苦労様ですの違い
「お疲れ様」と「ご苦労様」はどちらも相手の労をねぎらう言葉です。 この2つ、おそらくは「お疲れ様です」は下または同じ立場の人が、「ご苦労様です」は上の立場の人が使う言葉だと習うと思います。
辞書ではどうなっているでしょうか。「お疲れ様です」を大辞林で引いてみると、以下のことが書いています。
[名・形動]相手の労苦をねぎらう意で用いる言葉。また、職場で、先に帰る人へのあいさつにも使う。「ご苦労様」は目上の人から目下の人に使うのに対し、「お疲れ様」は同僚、目上の人に対して使う。
[補説]文化庁が発表した平成17年度「国語に関する世論調査」では、(1)自分より職階が上の人に「お疲れ様(でした)」を使う人が69.2パーセント、「ご苦労様(でした)」を使う人が15.1パーセント。また、(2)自分より職階が下の人に「お疲れ様(でした)」を使う人が53.4パーセント、「ご苦労様(でした)」を使う人が36.1パーセントという結果が出ている。
前半部には前述した内容と同じようなことが書いてあります。
後半には使い分けの世論調査が出ていますが、上にも下にも「お疲れ様です」で通している人が過半数いますね。
これは使い分けができていないというより、どう使っても問題にならない「お疲れ様です」の愛用者が多いということでしょう。
しかし特筆すべきは後半部の「ご苦労様ですを目上に対して使う人が15%いる」ということです。 これはビジネスマナーが分かっていない新入社員の回答とは切り捨てられないように思います。
相手と食い違った場合の対処法
世論調査では言葉の使い方は完全には一致しておらず、15%の人が目上に「ご苦労様です」を使っています。 10人に1人以上ということは、ビジネスの場において用途が食い違う相手に遭遇する可能性は十分にあります。
私見では年配の方にこの2つの用途が辞書に書いてあることと逆転している方の割合が多いように見受けられます。 これは間違っているというよりも、そういう常識の中で生きてきたと考えるべきでしょう。 言葉の用途なんて時代や所属で簡単に移り変わるものですからね。
しかしこういった人を相手にした場合、自分はどちらを使えばいいのか迷います。 年配の方は自分より上の立場の人だとしたら通常は「お疲れ様です」というべきですが、相手の認識では「ご苦労様です」こそが正しい言葉であるはずです。
「私はこう習ったのですが~」と質問や指摘をできる間柄ならいいですが、立場や政治の問題で難しいこともあります。 特に社外かつ立場が上の相手になんか言える訳ないですよね。
上が白と言えば黒いものでも白くなる日本社会、変に逆らわず「ご苦労様です」と言ってしまいたいところです。 しかしその人に対してだけ用途を逆転させようとすると複数の色々な立場の方が集まった場所で詰んでしまいますし、かといって上には「ご苦労様」で統一すると少数派に所属することになってやはり齟齬が起きそうです。こんな言葉作ったの誰だよと八つ当たりしたくなりますね。
さてそんな時どうすればいいのかと言えば、まあ大抵「お疲れ様です」で通してOKです。 部署や会社全体で用途が逆転しているレベルなら話は別ですが、個人に対しては問題ありません。 相手方も自分と逆の挨拶をしている人は沢山見ているはずですし、基本的に問題になりません。
それでも怒りそうな人であれば、何かしら言い訳を用意しておきましょう。 例えば「社の研修でそう習った」「○○さん(できるだけ上の立場の人)からそう教わった」など権威を盾にすれば、立場に潰されることもないです。
なんで挨拶一つでこんなこと考えなきゃならないんでしょうか。日本語って難しいですね。
まあ挨拶やマナーなんてお互いに気持ちよく過ごすためのものなので、変に形式にこだわるよりも相手への気遣いや敬意を忘れない方が大事だと思いますけどね。日ごろから礼儀礼節を重んじていれば、多少間違ったところでフォローはしてくれるはずです。