ミツバチ|花の蜜を集めてハチミツを作る
ミツバチは体長10~18mmほどの黄色と黒のストライプ模様が特徴の小型のハチです。 最大の特徴はその名の通りハチミツを作ることです。
多種のハチの中でもハチミツを作るのはミツバチ科だけです。 ハチは厄介な昆虫のイメージがありますが、ミツバチはハチミツを作り草木の送粉者を担う益虫として見られています。
ミツバチの特徴
役割の分かれた社会性昆虫
ミツバチは個体間で分業した集団を形成する社会性昆虫です。
巣には産卵担当の一匹の女王バチと、その他の業務を担う数千~数万匹の働きバチがいます。 働きバチは全てメスで、交尾済みの女王バチのみが産むことができます。
繁殖期には数匹の新女王バチ候補と、働きバチの1割ほどのオスバチが生まれます。 これらは繁殖のための個体で、巣の運営を手伝うことはあまりしません。
新女王バチ候補を産んだ旧女王バチは巣を譲り、半数の働きバチを連れて旅立ちます。 また早く生まれた新女王バチが他の候補を殺したり、後から生まれた新女王バチが巣から出ていったりするため、ミツバチの巣にいる女王は一匹だけです。
女王バチが死んだら働きバチも産卵するようになりますが、交尾していないので役立たずのオスバチしか生まれません。 新女王を育成しようとする動きもできるようですが、間に合わないと巣が崩壊してしまいます。
ハチミツを作る
ハチミツは働きバチのエサとして巣に蓄えられます。 働きバチは樹液や花の蜜を体内に貯めこみ、それが唾液や酵素で成分変化し、巣に戻って吐き出して加工・熟成したものがハチミツとなります。
また生後間もない働きバチは、花粉と蜜からローヤルゼリーという乳白色の液体を分泌します。 これは女王バチのみが食べる栄養価の高い特別なハチミツです。
幼虫の段階では女王バチと働きバチに違いはありませんが、ローヤルゼリーを食べて育ったものだけが女王バチとなります。 女王バチ候補の幼虫は王台という特別な場所に生まれ、ローヤルゼリーで育って女王バチへと成長するのです。
ちなみにハチミツの味はどの花から採集したかで味が変わるので、養蜂家は巣の付近に意図的に特定の花を植えることがあります。
人を刺すと死ぬ
ハチといえば毒針で刺してくるイメージがあります。 ハチ全部がそうではありませんが、ミツバチは刺してくるハチです。
メスのミツバチは産卵管が変化して毒針になっています。 オスバチにはない機能ですが、オスバチは数が少なく人前にも出てこないので、見かけたミツバチは大抵刺すことができます。
ミツバチの針には返しが付いていて、人などの皮膚が固い動物を刺すと針が抜けずに腹のほうが破れて死んでしまいます。 また性格も大人しいため、本当に危険を感じた時にしか攻撃してきません。
ミツバチは人間にとって大切な益虫なので、見つけてもそっとしておきましょう。
ミツバチの生態
ミツバチの一日
草原や山林に巣を作って集団生活し、そこを中心として半径2~3kmほどの範囲で活動します。 昼行性で日中に働き、夜は巣の中で休みます。
基本的に集団は一匹の女王蜂と、沢山の働きバチで構成されています。 働きバチは新しい働きバチが生まれるごとに外側へ移動し、それに伴って従事する仕事が変わっていきます。
働きバチは育児・巣作り・ハチミツ作りと仕事が変わっていき、3週間ほどで花の蜜の収集作業に従事します。 働きバチの寿命は1か月程度であり、危険な外勤を担当するのは寿命間近の個体となります。ある意味で合理的ですね。
ミツバチの一年
春になると越冬開けの働きバチが採蜜を始め、女王バチは産卵のピークを迎えます。 多い時は1日に千個もの卵を産み、巣の蜂は爆発的に増えます。
初夏に差し掛かる頃、働きバチが増えて巣が手狭になってくると、女王バチは数匹の新女王候補と数百匹のオスバチを産みます。 そして女王バチは働きバチの半数を引き連れて巣から出ていき、新女王に古巣を譲って新たな巣を作って生活を始めます。これを分蜂と言います。
新女王バチとオスバチは成熟すると巣を飛び出し、色々な巣から集まってきたものたちと空中で交尾を行います。 女王バチは近親交配を防ぐため複数のオスと交尾し、交尾が済んだ女王バチは巣へと戻って1日に数百~2000個もの卵を産みます。
なおオスバチは交尾すると女王バチに交尾器を切り取られ死んでしまいます。 また交尾できずに生き延びてしまったオスバチは秋の終わり頃に巣から叩き出されてやはり死にます。 初冬にミツバチの巣の下に大量の死骸があれば、多分それは叩き出されたオスバチです。
秋になるとエサの乏しい冬に備えて産卵は休みます。 冬の間は貯め込んだ食料を食べながら巣の中でじっとしていますが、温暖な地域では冬でも蜜を集めに出ることもあるようです。 そして暖かくなるとまた外に出て活動を始めます。
働きバチの寿命は通常1か月、越冬時4か月ほどで、女王バチの寿命は2~4年です。
ミツバチの仲間
ニホンミツバチ
ニホンミツバチは日本に生息するミツバチで、東ユーラシアに生息しているトウヨウミツバチの亜種です。 体はやや小さく胴体の黒い模様がはっきりしているのが特徴です。
セイヨウミツバチと比べると扱いやすさと採蜜量には劣りますが、日本に昔から生息していた種であるため日本の風土・気候・病気に対応しているのが強みです。 その歴史は長く、日本最古の史書である日本書紀の中にも養蜂の記述があります。
また天敵であるオオスズメバチへの対処も心得ています。 オオスズメバチの斥候がいたらニホンミツバチの方が熱耐性が高いのを利用し、スズメバチの周囲に群がって蒸し殺してしまうのです。 もし斥候を取り逃せば本隊を呼ばれてしまい巣が壊滅するので必死です。
セイヨウミツバチ
セイヨウミツバチは世界で広く養蜂されているミツバチです。 ただし一部地域では人の手を借りないと生きてはいけず、生息域に野生種がいるとは限りません。
西洋原産のミツバチで、ニホンミツバチと比べると若干大きく、体色が全体的に黄~茶色がかってボンヤリ見えるなどの違いがあります。
ハチミツの採集のために品種改良された種で、同じ環境ならニホンミツバチの5倍ものハチミツを産出します。 性格もおとなしく巣ごと逃亡するようなこともない養蜂者のためのミツバチです。
ただし本来の生息地以外では、気候が合わなかったり固有の天敵や疾病に弱いことがあります。