西インド諸島がアメリカにあるのはコロンブスの勘違いが由来
アメリカ大陸中央の少し東にあるキューバ辺りの島々は「西インド諸島」という名前が付いています。 しかしインドの西といっても、インドから西インド諸島まではほぼ地球を半周しているほど離れています。
それなのになぜ西インド諸島なんて名前が付けられたのかと言えば、コロンブスがアメリカ大陸を発見した時にインドと勘違いしたのが由来です。 実際に名付けたのはコロンブスではないですけどね。
コロンブスが目指したのはアメリカではなくアジアだった
コロンブスは1492年にアメリカ大陸を発見した偉人です。「いよくに(1492)燃えるコロンブス」の語呂合わせで有名ですね。 まあ発見というよりは、スペイン-アメリカ大陸間の航路を確立したとかそんな感じでしょうか。
そのコロンブスですが、実は目指したのはアメリカ大陸ではありませんでした。 マルコポーロの書いた「東方見聞録」にある黄金の国ジパング、つまり日本を目指していたのです。 あくまで最終的にですけどね。
コロンブスもジパングは東にあることは分かっていました。 それなのに西回りで行こうとしたのは、天文学者トスカネッリの地球球体説の影響です。
地球球体説は「世界は丸く球体で、ヨーロッパ・アフリカ・アジアの3大陸で構成されている」という説です。 この説に影響を受けたコロンブスは、アフリカ南端を回っていくルートよりも西回りルートの方が早くアジアに付くと考えました。
またヨーロッパの西側に大陸があるのは、一部で認知されていた可能性があります。 西暦1000年前後にレイフ・エリクソンがアメリカ大陸へ渡った伝説が残っていますし、当時北欧で活動していたヴァイキングがアメリカ大陸に住んでいた跡も見つかっています。 西に大陸がある話をどこかしらから聞く機会もあったことでしょう。
ヨーロッパの西に大陸があり、世界がヨーロッパ・アフリカ・アジアの3大陸で構成されているとすれば、アフリカ南端を迂回するよりも西回りで行った方が早いという考えは一理あります。 アジアの果ての日本を目指すなら尚更西回りの方が都合が良いです。
しかし我々は世界がそう出来てはいない事を知っています。 ヨーロッパから西回りでアジアを目指すと間にアメリカ大陸と太平洋が挟まっており、当時はパナマ運河もありません。 西回りでアジアを目指すのは大変な労力です。
コロンブスの新大陸発見から晩年まで
西回りではアジアは遥か離れた場所ですが、当のコロンブスはそんなことを知るはずもなくスポンサーを探しに奔走します。 もっともコロンブスもスポンサーも求めるのは名誉や利益などで、それをもたらすのがアメリカかアジアかは些細な問題なのかもしれません。 むしろアジアよりアメリカ大陸の方がヨーロッパに大きな利益をもたらしたでしょう。
コロンブスはスポンサーを見つけるためポルトガルやスペインを奔走していましたが、中々うまくいきません。 しかし悪運があったのか、1492年に700年以上続いたレコンキスタが終結します。 財政に余裕が出来たスペインはコロンブスへの援助を決定、フランス行きの道中に差し掛かっていたコロンブスを呼び止めて新大陸事業へと乗り出します。
スペインはアフリカ大陸への影響力が薄く、東回りでインドに向かうにはポルトガルを始めとした他国の影響が強い場所を回っていかなければなりません。 もしインドを支配下に置けたとしても外交が不安定になれば航路を妨害されて分断される恐れもあるので、西回りでアジアに行けるのであればそれに越したことはありません。 そんなスペインの後援を受けたコロンブスは1492年8月に三隻の船団と乗組員90人を率いて、一路インドを目指しスペイン・バロス港を出航します。
ヨーロッパからアメリカへの道中は海ばかりで、今まで探索に出た船団は誰も戻っていません。 そんな事情からか西には世界の果てがあり、滝のようになっていて落ちてしまうという話が信じられていました。 航海を続けるうちに船員たちの間には不安が巻き起こり、コロンブスも「あと3日陸が見えなければ引き返す」と約束するまで追い詰められていました。
しかし同年10月11日が終わろうとした時、ついにコロンブス一行は陸地にたどり着きます。 そして12日、原住民の浅黒い肌の色を見たコロンブスはインドに着いたと勘違いします。 こうしてスペインが発見した新大陸は「インディアス」と呼ばれるようになりました。
西インド諸島は当時からそう呼ばれていた訳ではありませんが、実際のアジアにあるインドが発見された後に区別のため、コロンブスの勘違いやインディアスを由来にアメリカ・カリブ海の島々は西インド諸島と呼ばれるようになりました。インドから西にざっと15000kmって所でしょうか。対して東インド諸島は東南アジアのフィリピンやマレーシアなどの島々を指します。インドから東にざっと3000kmといった所です。
そんな訳で西インド諸島がアメリカ大陸にあるのは、コロンブスの勘違いが由来という話でした。
ちなみにコロンブスはアメリカ大陸を発見した後、新大陸を発見した功績を称えられ、一時は莫大な富と地位を手にします。 その後もスペインの植民運動を指揮しますが、しかしその運営は割と行き当たりばったりでした。 スペインから監督能力を疑問視されたコロンブスは立場を悪くし、その後入植者の反乱などもあってついにスペインに送還されます。 地位ははく奪されてしまい、捲土重来を計って再度アメリカを目指すも難破して失敗、病気になって1506年に没しています。
コロンブスは生涯アメリカ大陸をアジアだと考えていたようですが、1500年にはヴァスコダガマがインド航路を発見しています。もう少し長生きすれば自分の勘違いに気づけたのかもしれません。それが幸せなことなのかは分かりませんが…