一握の砂(石川啄木)-あらすじと感想

handful of sand

一握の砂は1910年に発表された石川啄木の551首の短歌集です。 「我を愛する歌」「煙」「秋風のこころよさに」「忘れがたき人人」「手套を脱ぐ時」の五部構成になっています。

啄木作と知らなくても、どこかで聞いた覚えがある歌もあるかもしれませんね。 本稿では私の選ぶ傑作選の形で紹介させて頂きます。

あらすじ

代表作・有名作

東海の 小島の磯の 白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる

頬につたふ なみだのごはず 一握の 砂を示しし 人を忘れず

たはむれに 母を背負ひて そのあまり 軽きに泣きて 三歩あゆまず

いのちなき 砂のかなしさよ さらさらと 握れば指の あひだより落つ

はたらけど はたらけど猶ほ わが生活 楽にならざり ぢっと手を見る

石をもて 追はるるごとく ふるさとを 出いでしかなしみ 消ゆる時なし

ふるさとの 山に向ひて 言ふことなし ふるさとの山は ありがたきかな

ふるさとの 訛なつかし 停車場の 人ごみの中に そを聴きにゆく

ふるさとの 空遠みかも 高き屋に ひとりのぼりて 愁ひて下くだる

手套を 脱ぐ手ふと休む 何やらむ こころかすめし 思ひ出のあり

奇作

わが髭の 下向く癖が いきどほろし このごろ憎き 男に似たれば

怒る時 かならずひとつ 鉢を割り 九百九十九 割りて死なまし

非凡なる 人のごとくに ふるまへる 後のさびしさは 何にかたぐへむ

実務には 役に立たざる うた人と 我を見る人に 金借りにけり

一度でも 我に頭を 下げさせし 人みな死ねと いのりてしこと

どんよりと くもれる空を 見てゐしに 人を殺したく なりにけるかな

夜明けまで あそびてくらす 場所が欲し 家をおもへば こころ冷たし

人みなが 家を持つてふ かなしみよ 墓に入るごとく かへりて眠る

わが抱く 思想はすべて 金なきに 因するごとし 秋の風吹く

師も友も 知らで責にき 謎に似る わが学業のおこたりの因

感想

啄木の歌で有名なのはどこか綺麗な印象があるものばかりですが、歌集にあるのはそれだけではありません。 普段の生活の何気ないことを歌ったものや、上で奇作として挙げたなんだかアレな歌など、啄木のことを人間らしいと思えるような歌がたくさん収録されています。

またいくつかの歌を通すことで始めて啄木の想いが垣間見えるものもあります。 例えば「我を愛する歌」には「砂」が出て来る歌が9首ありますが、これら全てを通して見ることで啄木が砂にどのような想いを持って何を言わんとしているのかが推測できるような気がします。

啄木の私生活は問題だらけで、中学校を辞める、勤めていた新聞社を辞める、たまに金があるとすぐ女遊びに使う、周りに借金して踏み倒すなど率直に言って駄目人間です。 その性格や思想がにじみ出ているような歌も多く、読むと啄木への理解が深まるかもしれません。

中には「曇り空を見てると人殺したくなるなあ」とか「俺に一度でも頭を下げさせた奴はみんな死ね」とかとても率直で人間くさいものもあります。 代表作として挙げたものに比べると知名度は低いですが、こういった一面も啄木の魅力であると思います。

そんな駄目人間でもある啄木ですが、同時に綺麗な心と詩の才能を持ち、多くの人に愛されていました。 そんな等身大の啄木が伺える一冊と言えるかもしれません。

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