シロワニ|子が子宮内で共食いをするサメ
名称(学名) | シロワニ (Carcharias taurus) |
---|---|
身体 | 体長:2.5~3m 体重:150kg |
生息地 | 温帯・熱帯の海 |
食性 | 肉食 |
シロワニの特徴
シロワニは体長3mほどのサメで、灰色の背中と白い腹をしています。 サメなのにワニと名前が付いているのはその昔サメがワニと呼ばれていた名残です。
シロワニは子が共食いをするワニとして有名です。 サメの一部は卵胎生という繁殖形態で、卵を体の外に産まず体内で孵化させてから出産します。 シロワニもそんな卵胎生なのですが、シロワニの子は孵化した後も子宮内にしばらく留まるという卵胎生の中でも珍しい習性を持っています。 子宮内にいる期間はなんと9~12か月にも及び、その間の食べ物はどうしているのかと言えば、なんとシロワニの子は子宮内で共食いをして育つのです。
子宮の中で一番最初に産まれたシロワニの子は、他の胎児や卵を食べて栄養を得ます。 それからも母親の子宮内に産卵される卵を食べて成長し、親の体内から出て来る頃には1mにまで成長します。 このように卵を食べる習性を「卵食性」と言いますが、動物全体で見てもかなり珍しいものです。
シロワニの子宮は2つあるため、一度に最大2子を産み育てることができます。 卵生の動物で一度に産めるのが二匹だけと聞くと少なく思えますが、これはとても合理的な繁殖形態です。
通常卵生の動物は卵を沢山産みますが、卵の状態はとても弱くその多くは捕食者に食べられます。 また孵化した後も成長するまでは脆弱な存在であり、成熟するまで大きくなれる個体の数はそう多くありません。 マンボウなんて3億個の卵を産むのに成熟するまで生きていられるのは数匹しかいません。
シロワニは脆弱な卵~幼生の期間を安全な子宮内で保護し、立派に成長させてから出産しているのです。 そのおかげで出産直後でも体長1mの立派なサメであり、簡単に捕食者に食べられることはありません。
卵食性は一見すると共食いしているような残酷な習性に見えます。 しかし卵をそのまま産んだところで結局生き延びられる子の数は増えないどころか、全て食べられてしまう可能性すらあります。 シロワニは多数の子を犠牲にしても2匹の子を立派に育てる選択をしているのです。
ちなみにこのシロワニ、サメにしては大人しくあまり人間を襲うことはあまりないと言われています。 まあそれでもサメはサメなので危険なのですが、比較的温厚な性格なのでダイバーがシロワニを見に近くまで行ったり一緒に泳いだりなんてことも可能です。
シロワニの生態
生息地
生息域は大西洋、インド湾、西太平洋などの世界中の温帯~熱帯の海に生息してます。
水深20m~200mほどの沿岸付近で少数の群れを作って泳いでいることが多いです。
普段の生活
どちらかと言えば夜行性で、昼は岩陰などでじっとして夜に採食活動を行うことが多いです。 狩りの際には集団で連携して獲物を襲います。
肉食で魚類、甲殻類、軟体動物などを食べます。
繁殖と成長
10月頃に繁殖期を迎え、交尾すると子宮内に産卵します。 子宮内で産まれた仔魚は他の仔魚や卵を食べて育ち、生き残れるのは子宮内で最も強い1匹だけです。
仔魚は9~12か月ほどを母親の子宮内で過ごし、その間に1万~2万個もの卵が子宮内で産卵されますが全て仔魚のエサとなります。 十分に育った仔魚は出産されると独立して生活を始めます。
子宮は2つあるので、一度に2匹の仔魚を育てることができます。 この特殊な繁殖形態のため、シロワニは2年に1度しか繁殖活動を行えません。
10年ほどで成熟し、寿命は20年ほどです。