クジラの潮吹きは空気を吐き出しているだけ

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クジラは水面近くで呼吸する際に、水しぶきを上げる「潮吹き」を行います。 潮吹きは遠くからでも確認できるほどの水柱が立ち、クジラと言えば潮吹きと言われるほど印象深い行動です。 ホエールウォッチングではクジラの潮吹きが見どころのひとつとされているほどです。

このクジラの潮吹きは一体何をしているのかというと、実はただ空気を吐き出しているだけです。 肺の中に貯まった空気を一気に吐き出した際に周囲の海水も一緒に吹き上げられ、それが水柱となったのがクジラの潮吹きなのです。

よくある勘違いに「クジラは海水を吐き出して潮吹きしている」というものがありますが、クジラが空気を吐き出している際に周囲の海水も一緒に巻き上げられているだけなので間違いです。

クジラの潮吹きで吐いているのは海水ではなく空気

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クジラは哺乳類で肺呼吸をしています。 陸上動物ではカバなどと比較的近い関係にあり、クジラの祖先は陸上で生活していました。 つまりクジラは進化の過程で活動の場所を海→陸→海と変えてきた訳です。

なのでクジラは呼吸する際には海上に出てこなくてはなりません。 呼吸間隔はクジラの種類にもよりますが、15分~1時間ごとに海上に出て呼吸をします。 その呼吸の際に吐き出した息が海水を巻き込んで潮吹きとなっているのです。

空気を吐き出すタイミングは海中から上がってきた直後です。 なぜ潮吹きするほど空気を吐くかは、人間が水中に長時間潜る時を考えれば分かります。

水中に潜る場合、肺一杯に空気を入れますよね。 多少は水中で吐くかもしれませんが、水中では基本的に空気を肺に入れたまま活動します。 そしていよいよ苦しくなって水上に上がったら、まずやるのは肺に貯まった空気を思いっきり吐くことです。 肺を空にしないことには新たな空気を吸えませんからね。

クジラの潮吹きも人間と同じで、肺に貯まった空気を一気に吐き出しているだけです。 その際に鼻の穴や体に付いていた海水も一緒に巻き上げられて潮の柱となり、潮吹きとして観測できます。

なおクジラは鼻で呼吸するので、潮吹きは鼻息ということになります。 クジラは海上で呼吸しやすいように鼻が頭の天辺に付いており、水面から少し頭を出せば呼吸できるようになっています。

潮吹きにおける水柱の高さは大よそクジラの肺活量=大きさに比例し、一般的なクジラは大体は4~5mぐらい、最大サイズを誇るシロナガスクジラの潮吹きは10mにも達します。

ちなみにイルカも水上に上がった際、クジラと同様に鼻から息を吐き出します。 しかしイルカは元の大きさが小さく、また潜水時間が短い=肺も小さいためにクジラほど大量の空気を吐き出しません。 だからイルカも一応潮吹きはしますが、クジラのように遠くから確認できるような規模のものではありません。

クジラは海水を飲まない

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クジラに関する勘違いに「クジラはエサと一緒に飲んだ余分な海水を潮吹きで吐き出している」というものがあります。 しかしそもそもクジラはほとんど海水を飲みません。

海は水分が豊富で一見飲み水に困らない場所に見えますが、海水は体液よりも塩分濃度が高いです。 単純に海水を飲んで水分補給すると塩分過多となるため、海水を飲み水とするには体に塩分を排出する仕組みを持っている必要があります。

例えば人間は塩分を排出する仕組みなんて持っていないので、海水を常飲すると体に塩分がどんどん蓄積されています。 日常的に尿や汗から少しずつ排出されますが、排出量よりも摂取量が多くなるため排出が追いつかずに塩分過多となり、やがて体調を崩して死んでしまいます。 ちなみに塩の致死量は200~300g程度で、海水9リットル程度から摂取できてしまいます。

なので海で暮らす生物は体内の塩分を排出できる仕組みを持つものが多いです。 例えばウミガメや海鳥は「塩類腺」、魚は「塩類細胞」という器官を持っています。 これにより余計な塩分を排出できるため、海水を飲んで水分補給ができる訳です。

しかしイルカやクジラはこのように塩分を排出する仕組みを持たないものが多いです。 なので基本的にはエサの体液から水分を補給し、それでも不足した場合は海水を少量飲んで補給します。 陸上動物に比べると塩に強い体の作りになっているので、多少なら海水を飲んでも問題ありません。

そんな訳でクジラやイルカは基本的に水分はエサから補給するので、基本的に海水は飲まないという話でした。 だから潮吹きも飲んだ海水を吐き出している訳ではないのです。

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